ココロが動いた!秀逸コピー #12

#12 ワークマンの企業ビジョン

 1980年に職人向け作業用品専門店として誕生したワークマン。昨今は店舗数で、ファストファッションの雄ユニクロを抜く大躍進を遂げています。その決定打になったのが、アウトドアショップを思わせる新業態「ワークマン・プラス」の出店(2018年)です。これによりワークマンは、コロナ禍においても2020年度上期の売上高は前年度比で18.6%増という伸びを見せました。この快進撃を支えてきたのが"他者の意見にしっかり耳を傾ける"アンバサダーマーケティングに基づいたワークマン独自の商品開発戦略です。その思想はワークマンの企業ビジョンに掲げられ、ブランドコピーにも用いられています。
声のする方に、進化する。
 「声のする方に、進化する。」これは、近年最も優れたブランドコピーの1つではないでしょうか。ブランドコピーとは、商品やサービスの認知度を高めて売り上げに直結させようというのではなく、モノづくりに対する姿勢やサービスをおこなう上での思いを示して、会社やブランドのファンづくりを目的としたキャッチコピーです。
 では、なぜこのコピーが優れているのか。それは、「声のする方に」のひと言が、現在のワークマンのモノづくりの在り方と、企業としてチャレンジすべき方向性を、如実にかつ端的に物語っているからです。

アンバサダーの声を素直に聞く

 「声のする方」の一つは、ワークマンが信頼する「アンバサダーの声」です。この声こそが、ワークマンの進化の枢要となっています。アンバサダーとは、ワークマンの製品に強い関心と愛情を持っていて、YouTubeやTwitterなどで好意的な情報発信をしてくれるヘビーユーザーのことを指します。
 例えば、コロナ禍において火がついた自転車ブーム。その波に乗ってワークマンは、人気自転車YouTuberの今田イマオさんをアンバサダーに迎えて「MOVE ACTIVE CYCLE」シリーズ(サイクリングウェア)の開発をおこないました。その結果、このシリーズは大ヒットし、新市場(サイクルスポーツ)の開拓に成功しました。ワークマンには、こうしたアンバサダーがジャンルごとに30人ほどいて、彼らの声を受け入れて商品開発することで数多くのヒット商品を生んでいます。
※今田イマオさんInstagram:https://www.instagram.com/imao11/?hl=ja

世間の声に敏感に反応する

 そしてもう一つの声は顧客ニーズを始めとした「世間の声」です。一例にマラソンシューズの開発があります。東京五輪直前、ナイキが開発したカーボンファイバープレート内蔵の厚底マラソンシューズが注目を浴びました。ところが、「マラソンで好記録が出過ぎる」という理由から、国際陸連が公式大会での使用禁止を匂わせます。するとワークマンは、独自開発した高反発素材BounceTECHを搭載した厚底ランニングシューズを1900円で販売し、なんと20万足を売り上げました。
 かたや、ナイキシューズの使用禁止を受けて、世界中のランナーや投資家たちは大反発。一転して使用が認められると、その声に反応したワークマンは、独自開発のカーボン配合プレートシューズを2900円という破格(ナイキの約10分1)で発売して世間の度肝を抜きました。
 このように、ワークマンは常に世間の声に耳を傾けて、そこにビジネスチャンスがあると見れば、作業用品の製造で培った技術力と生産体制をもって新しい領域に踏み出し、その領域で存在感を示してきました。

軸足を変えずに進化を続ける

 作業用品専門店時代のワークマンは、演歌歌手の吉幾三さんが作業員に扮したテレビCMで認知度を上げました。その頃のブランドコピーは「やる気わくわくワークマン」というもので、当時のワークマンが耳を傾けていたのは、「昔ながらの作業服はダサくてやる気がでない」という若い作業員たちの声です。
 そうした「作業現場の声」に応えることで、ワークマンは進化への第一歩を踏み出し、ブランドコピーも「声のする方に、進化する。」に切り替わっていくことになります。
 しかしながら、本質的な事業ドメインは変わっていません。今なおワークマンの軸足は「作業用品」に置かれていて、ユニクロのようなアパレルブランドを目指しているわけではありません。
 差別化のポイントも、お洒落さよりも、防寒や防汚、撥水、防水といった機能性優位の商品づくりです。ただこの秀でた強みがあるからこそ、まだまだ多角化の余地がある。ワークマンには今どんな声が聞こえているのか。これからの進化が楽しみです。

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■記事公開日:2022/07/06
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼撮影=吉村高廣

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