やっぱり眼鏡が合っていないんでしょうか?
いまひとつピントが合わないんです。
目の使いすぎだと思うんですが。少し頭痛もするんです。
まず頭痛については「目の使いすぎ」ということはありません。そもそも「目の使いすぎ」という表現自体に誤りがあります。実のところ、使いすぎているのは目から入ってきた情報を分析したり理解しようとする頭であって、疲れているのは頭です。したがって眼科医としては、日ごろから仕事がお忙しい熊谷さんの今の頭痛については「少しお休みください」としか言いようがありません。むしろ問題なのは、眼鏡をかけてもピントが合わないという方です。
眼鏡の問題じゃないんですか?
これまで眼鏡をかけてこなかったので、
ピントが合いにくいのかと思っていました。
眼鏡のせいではありません。熊谷さんは糖尿病網膜症という病気の初期症状が見られます。一般的に糖尿病は50代で発症される方が多く、目の障害はその合併症の1つです。目というのは網膜で光を受けているわけですが、網膜の細胞を養うためには血管が健全でなくてはなりません。ところが糖尿病を発症すると、人によっては目の細い血管が詰まったり破けるなどして障害が現れます。熊谷さんの見えにくさの原因は、まさしくその初期症状によるものです。
糖尿病ですか?でも普通は血液検査などをしますよね。
目の検査だけじゃなくて、きちんと血液検査をしたほうがよい、
ということでしょうか?
おっしゃる通り、血液検査などで糖尿病やその他の成人病は発覚するケースが多いのは事実です。しかしながら、目というのは体の中で唯一血管の状態を視認できる部分なのです。事実、熊谷さんの網膜を撮影したところ小さな出血が確認できました。これは明らかに糖尿病網膜症に一致する症状です。ただ、幸いにして早めに確認ができたので失明という最悪のケースには至りません。糖尿病に対するケアをしっかり行い、眼科的な治療を行うことで日常生活の大きな影響を及ぼすことはありません。