働く人の健康ライフ2 働く人の健康ライフ2

働く人の健康ライフ2

Vol.5また今日も眠れない...、その理由は?改善策は?


皆さんは毎晩十分な睡眠をとれていますか? 胸を張って「Yes」と答えられる方は幸せです。現代はストレス社会、なんと5人に1人の方が不眠の悩みを抱えているといいます。ところが、日々仕事に忙殺されて「寝ることを真剣に考えているヒマはない」という方も多いはず。しかし不眠を放っておくと手痛いしっぺ返しを喰らうことにもなり兼ねません。そこで今回は、睡眠のスペシャリスト・快眠アンバサダーの小林瑞穂先生にお聞きしました。

Q.

夜なかなか眠れません。原因はなに?

不眠の原因は人それぞれです。十把一絡げにしてお答えすることはできませんが、睡眠環境の問題以外におおまかに分けて次の3つの"不眠タイプ"が考えられます。

1.自律神経のバランスが崩れている
2.日中のハードワークで脳の興奮が収まらない
3.メンタルの問題で悩みや不安を必要以上に考え過ぎてしまう

これら3タイプの共通点は、就寝時に"交感神経優位"の状態にあること。これが不眠の主要因といって良いでしょう。

皆さんも、交感神経と副交感神経という言葉は聞いたことがあると思います。その状態を簡単に説明しますと、交感神経優位のときは気持ちが昂って脳が興奮状態にあります。一方、副交感神経優位のときは脳や体が緩みリラックスした状態です。

「今日も忙しかった」と、早めにベッドに入っても、脳がクールダウンされていなければ、疲れているのに眠れません。また、小さなミスや、人から言われたことをくよくよ考えているときの脳は緊張状態にあり、なかなか眠りにつくことができません。不眠を解消するためには、就寝前の脳と体の状態を、副交感神経優位に切り替えることが肝心です。
Q.

「寝なきゃ」と思うほど眠れません...

「早く眠りたい」「いい加減寝なきゃ」...そう思えば思うほど頭が冴えて眠れなくなっていく。こうした悩みは非常に多くの方が抱えています。そこでまず申し上げたいのは「ベッドに入ったら寝なきゃいけない」という睡眠に対する義務意識を捨てていただきたいということです。

寝なきゃいけない。こう考えるときの心理状態は、寝ることがmustな条件になっています。つまり「~しなくてはならない」というネガティブな感情(強迫観念)を自分から募らせているようなもの。これではいつまでたっても頭も体も眠くなってくれません。「寝なきゃ」ではなく、自然と「寝たい」と思えるようになること。これが快眠の大前提です。
もしその理由がメンタル面に起因しているのなら、ベッドを抜け出てリビングで眠くなるまでさんざん悩んでください。少し荒治療ですが、現役のビジネスパーソンならそうした"認知行動療法"も有効です。
ただし、ここでお酒に頼るのはNGです。

Q.

睡眠不足が仕事に与える影響は?

ちなみに、その人のベストな睡眠時間が8時間だったとしましょう。ところが仕事が忙しくて、毎日6時間しか睡眠がとれない日が2週間続いたとします。すると2週間後の脳は、2日徹夜したときと同じ状態になっています。わずか2週間なので、それほどの自覚はありませんが、"睡眠負債(睡眠不足)"は確実に蓄積されています。
ある大学の研究結果によると、この場合の作業効率は40%もダウンするといいます。40%というと飲酒運転と同じレベル。2週間前と同じ作業をしていても、1時間でできていたことが1時間半かかる。当然ながら小さなミスを頻発して非常に無駄です。

多忙や不眠などの理由から睡眠負債が溜まっている人は、休日にいつもよりも長めに寝て(長くても2時間まで)1回起きる。そこから普通に行動して、昼寝を20分~90分くらいとることをお勧めします。こうしたリセットをしないと睡眠負債がどんどんたまっていき、知らず知らずのうちに仕事の生産性は下降線をたどり、どこかで大きなミスをし兼ねません。睡眠負債は2週間以上ためないことが鉄則です。

Q.

何時間眠ればいいのでしょう?

カウンセリングをしていて一番多い質問です。「ベストな睡眠時間は人によって異なります」が回答です。統計的な数字でいえば、7時間から8時間くらいということになるでしょう。しかし、働き盛りのビジネスパーソンにそれを求めてもリアリティがありません。長さよりむしろ先に着目すべきは"睡眠の質"です。とはいえ、短眠者以外の人は、最低でも5~6時間以上確保しないと心身の健康被害につながる可能性があります。

睡眠効果のダイナミズムをかいつまんで説明しますと、入眠後、深く寝入ってからの3時間をしっかり眠れれば、頭も体も十分な休息をとれることが立証されています。ならば「3時間以降の睡眠は不要なのか」、ここは専門家の間でも意見が分かれるところです。そこで、睡眠時間や眠りの質を考える上で指標となるのは、"日中のパフォーマンス善し悪し"と考えて良いでしょう。

日中職場で、あくびばかり出て仕事がはかどらない。簡単なミスを繰り返す。こうした支障が顕在化しているのなら、その人に必要な睡眠時間が足りていないのでしょうし、眠りの質にもきっと問題があるはず。原因究明と改善策が必要です。ただし、日中元気に仕事に取り組めているようなら、3時間でも4時間でもかまいません。事実、日本人の約2%がショートスリーパーといわれています。いつも元気な明石家さんまさんなどがその代表格として有名です。

Q.

不眠を脱出し仕事力を上げる対策はありますか?

習慣にしていただきたい取り組みが3つあります。ここではそのポイントを簡潔にご紹介します。ぜひ実践してみてください。

1.カーテンを開けて寝る

次第に明るくなる日の光を浴びながら目覚めれば、体がスムーズに起きる準備に入ります。朝日を浴びることがなぜ睡眠と関係するのか。その理由は、体内時計をリセットさせて休眠モードから活動モードに移行させる。脳機能のバランスを整える"セロトニン"の分泌を促し睡眠と寝起きのリズムをつくる。などの理由が挙げられます。そしてさらに、セロトニンは起床後15~6時間後に放出される入眠ホルモンである"メラトニン"の前駆物質でもあるのです。

2.夜はゆるめる 

寝る前は、日中働いて緊張状態になっている脳と体を落ち着かせ、ゆったりと過ごす時間をつくり交感神経優位の状態から副交感神経優位へと切り替えます。何をすればいいのか...ご自分がリラックスできる「好き」なことなら何でも結構です。お風呂に入ったり、温かい飲み物を飲むのも良いでしょう。ただし、夜遅くのランニングやジム通いはあまり好ましくありません。心拍数が上がり、交感神経が優位に傾いてしまうため、睡眠を妨げる要因にもなり兼ねません。

3.朝は好きなことからはじめる

朝の「好き」は、ワクワクして気分が高揚するようなアクティブな「好き」です。大好きなものを食べるなど朝のひとときでできる簡単なことで構いません。体内で分泌される脳内物質はさまざまな役割があり、それが人間の行動や気分を左右します。朝から効率よく能を働かせ、一日を元気に始めるためには"やる気と快楽"効果のあるドーパミンを分泌させてしっかり体と脳を覚醒させる。さらに、昼間はしっかり活動(仕事)して、頭も体も程よく疲れることが大事です。

Point快眠アンバサダー 小林瑞穂先生からの
メッセージ

生き物として生きるだけならば、脳疲労や肉体疲労がとれる睡眠で十分です。しかし、自分の能力や、自分らしさということを考えると、さらに質の良い睡眠の確保が必要です。質の良い睡眠をとれなければストレスを処理できなくなります。結果、仕事の生産性が低下したり、イライラが募るなどして、対人関係に悪影響を及ぼすことにもなり兼ねません。だからこそ、ビジネスパーソンとしていい状態で仕事をするためには、質の高い睡眠が大事なのです。今回の記事が不眠に悩む方々のお役に立てば幸いです。

快眠サロン水月~mizuki~ 快眠アンバサダー小林 瑞穂さん
薬学部卒業後、医療系企業を経てカウンセリングを学び薬剤師に。日本に10人しかいない"シニア睡眠改善指導員"の資格を取得し「快眠サロン水月~mizuki~」をオープン。現在はオーダーメイドの睡眠&生活改善提案に加え、企業人を対象とした「ハイパフォーマンス睡眠法」に関するセミナーや企業研修を実施。
http://mizuki-kaimin.com/

『できる大人9割がやっている 得する睡眠法』
小林瑞穂著(宝島社)

頭も冴えて仕事もはかどる!眠れないビジネスパーソン必読の一冊です。
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■記事公開日:2017/09/19 ■記事取材日: 2017/08/29 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼イラストレーション=吉田たつちか ▼写真提供=快眠サロン水月~mizuki~

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