メンタル不調の原因は?
単刀直入に言えばストレスです。人間関係、仕事の質、仕事の量、この3つが"職場の3大ストレス要因"と言われています。今私が訪問している企業の1つは、最近、組織編成があって人が減り、まず、個人の仕事量が圧倒的に増えました。加えて、今まではタイプAの仕事しかしていなかった方が、タイプBの仕事も任されるようになって仕事の質まで変わってきた。つまり、今まで培ってきたスキルとは完全にミスマッチな領域においても仕事に向き合い、成果を挙げることが求められるようになったのです。とくにそれが企画や設計等の仕事であったりすると、それまでとは違う頭の使い方が求められます。ところが、管理職ともなれば上司に相談したところで「それを何とかするのが君の仕事だろう」ということになり、上司がストレスの緩衝材になりません。こうしたことで、メンタルに不調をきたす方が少なからずいらっしゃいます。
人間関係が及ぼすリスクとは?
若手社員に話を聞くと、「自分はここで何をしているか分からない」という方が結構います。「とりあえず頑張っているけれど、この仕事が何につながるかが見えてこない」と。これは大事な指摘で、プロジェクトのビジョンや業務の重要性がきちんと伝わっていない証拠です。「自分が手掛ける仕事にはこういう価値がある」ということを理解できてこそ、人は初めてモチベートされるし責任感が生まれます。
ところが、そこまで仕切れていない。管理職自身も、会社が何をやろうとしていて、どんなビジョンがあって、どこに進もうとしているかを把握しているかというと、実際にはそこまで頭が回っていないケースが多い。結果、部下をきちんとリードできず、そのしわ寄せが自分に返ってきているのが現状です。
メンタル不調をケアするためには?
やれることはたくさんありますが、まずは、予防も兼ねたセルフケアの観点から、「最近、オーバーワーク気味かな?」と思った時には、"考え方のガス抜き"を習慣化することが大事です。メンタル不調に陥るのは、基本的に真面目で、ある種の完璧主義の方です。「なんとかして期待に応えたい!」とか、「完璧に仕上げたい!」という気持ちが強くなり過ぎると、考え方や態度に、遊びや隙がなくなります。仕事に向かう姿勢としては決して悪いことではありませんが、そうした時というのは、無自覚に"殺気だっている"ものなのです。殺気だっていれば、部下とのコミュニケーションは取れませんし、同僚や上司に対してすら近寄りがたい雰囲気を醸し出しているはず。周囲との距離がどんどん広がってゆき、孤独になります。
メンタル不調の症状は?
「何をやっても上手くいく気がしません」と産業医に自己申告してくる方も中にはいらっしゃいますが、実際にはそうした方は多くありません。むしろ人事や上長から、「最近この人は勤怠が乱れているので面談をしてください」といった理由などで回ってくるケースがわりと多いのです。そうした方の話を聞くと、ずっと仕事のことが頭から離れず、交感神経が優位に傾き、「眠れない」という訴えが非常に多くあります。なので、土日ですら仕事のことが頭から離れず、その結果、月曜日の朝が憂鬱になって、体が動かない、頭が痛い、胃が痛い、痺れがあるなど、人それぞれに、なんらかの身体症状が顕在化してきます。