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役割と役職がピラミッドのように定められた組織構造を「階層型組織」と呼びます。多くの日本企業がこれに当たり、指揮・命令系統が分かりやすいという理由から長年採用されてきました。一方、デメリットとしては、個々の役割が定められているため広い視野を持ちにくい、下から上にプランを伝えようとしても意思決定に時間がかかる、などが挙げられます。こうした組織風土を撤廃して、業務効率を高めようというのが「ホラクラシー型組織」です。今回はホラクラシー経営のメリット・デメリットのほか、実際にホラクシー経営をおこなう企業例を紹介します。
ホラクラシー型組織には、上司も部下も存在しません。個々の社員が自分の判断で意思決定をおこない、自律的に仕事をします。もともとは、2007年にアメリカのソフトウェア会社が提唱・実践した組織形態で、IT系のスタートアップが本質的に持っているアンチ中央集権性を反映した組織形態とも言われています。ホラクラシー経営の定義を要約すると、次の3つに集約されます。
①役職や肩書による上下関係ではなく、役割による組織化 ②ピラミッド型の組織ではなく、流動的な組織を志向する ③業務のマネジメントではなく、業務の環境づくりを重視する
これらの実現を目指すことによって、社員が主体的に業務に取り組むようになり、人間関係によるストレスのない職場づくりがおこなえると考えられています。
ホラクラシー型組織のメリット 階層型組織にはリーダーが存在していて、部下や仕事の進捗を管理する役割を担っているのが一般的です。しかし、ホラクラシー型組織にはそうした役割を担うリーダーが存在しません。各々の社員が意思決定をおこない、主体的に仕事に集中することが求められます。このことによって高い責任感とモチベーションが育まれ、プロジェクトの推進や会社の成長を促す上で大きな強みになります。また、個々が自律して仕事を全うするため、上司からの理不尽な命令に悩まされることもありません。管理職がいないフラットな組織には派閥や出世競争もなく、ネガティブな人間関係でのストレスに苛まれることもありません。
ホラクラシー型組織のデメリット リーダーが不在であるため責任の所在が曖昧になりがちです。例えば、トラブルが発生しても社員は自力で解決しなくてはなりません。また、人や仕事の管理をおこなわないので、業務の進捗や行動把握がしにくく、プロジェクトをコントロールすることが困難になります。透明性と公平性を保つ観点から機密情報も社内共有するので、外部への漏洩リスクも指摘されています。

キープレスの『オフィス探訪』で紹介した企業の中にも、ホラクラシーな企業があります。
株式会社アトラエは、組織づくりやオフィスづくりにおいても、「意欲のある社員が無駄なストレスなく、活き活き働き続けられること」を前提として、働き易さと働き甲斐のある空間づくりを目指していました。昇進制度や肩書をなくしてフラットな組織を標榜。全社員の間で「世界中の人々を魅了する会社を創る」という壮大なビジョンが共有されており、出勤時間も服装も自由。さらには経営陣と同じレベルでの情報共有など、絵に描いたようなホラクラシー経営を実践する組織でした。
株式会社アトラエのオフィス:/key-press/tanbou/post_232.html

IT系クリエーター集団の株式会社(面白法人)カヤックは、直接的にホラクラシーとは謳っていませんが、その取り組みはホラクラシー経営の要素が強くありました。『地域資本主義』を標榜し、会社の拠点である鎌倉をベースに縦横無尽に事業規模を拡大。「まずは、自分たちが面白がろう。つぎに、周囲からも面白い人と言われよう。そして、誰かの人生を面白くしよう」。そんな思いを経営理念のボトムとして、常識を覆す面白い取り組みをおこなっている企業です。
株式会社カヤックのオフィス:/key-press/tanbou/post_210.html

ホラクラシー経営を実践する企業の取材を通して得た印象では、まず、仕事を自己管理できるプロフェッショナル集団であること。そして、しっかりとビジョン共有が成されている組織であること。この2つが揃った企業はホラクラシー効果が得やすいように思いました。
ただやはり、依然として階層型組織が圧倒的に多い日本で、今後、ホラクラシー型組織がどれほど根付いていくかは未知数です。その一方で、「著しく変化する時代にはホラクラシー型組織が相応しい」という見方は決して少なくありません。究極的に言えば、企業内ルールが少なく個々に任せられることが多いホラクラシー型組織は、「社員を信頼して任せること」ができる企業にこそ合致する組織形態と言えるでしょう。
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■記事公開日:2022/04/14
▼構成=編集部 ▼監修=清野裕司 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=AdobeStock

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