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ワークスタイル・ラボ

コロナ禍で急速に進んだテレワーク。社員同士が離れていても、互いにサポートし合いながら業績を伸ばしてゆくにはどうすればよいかが課題になっています。そうした時期だからこそ、「自分の力を最大限に発揮して会社に貢献したい」というワークスタイルが求められるわけですが、それを社員に求めることはできません。なぜなら、そうした感情は人から強要されるものではなく、自然発生的に生まれるものだからです。逆説的に言うなら、今この時期に結ばれた絆は強い。アフターコロナに会社を成長させる原動力になることは間違いありません。そこで今回は、現代の愛社精神とも言うべき"エンゲージメント"について考えます。
アメリカの大手調査会社ギャラップ社が発表した『職場状況の国際比較調査』によると、日本において「熱意のある社員」の割合は6%に過ぎず、71%が「熱意が欠ける社員」に当たり、残りの23%は「全く熱意がない社員」という衝撃的な調査結果が出たそうです。これは、調査した対象国139カ国中にあって132番目という低さで、日本の将来を憂う実態把握となりました。

会社の経営陣は皆、「社員に会社へのロイヤルティを持って欲しい」と思っているはずです。その一方、バブル崩壊前後に生まれた若手・中堅社員は、就職氷河期のさなかに育ち、リーマンショックで多くの失業者を目の当たりにし、そして現在は、先行きが不透明なコロナ禍に働いています。あらゆる場面で「自助」が求められる社会の中で、こうした社員に高いロイヤルティを期待するのは"至難の業"と言えるでしょう。

そもそもロイヤルティとは、「社員が会社に対して忠誠心を持ち、会社が決めた方針を忠実に行動する」ということです。いわば、会社と社員は主従関係にあります。これは終身雇用制度や年功序列制度などをベースとして成長してきた日本企業独自の"雇用の在り様"とも言えます。それが崩壊しつつある今、盛んに言われ始めているのが「エンゲージメント」という言葉です。
ロイヤルティとエンゲージメントの違いは、そこに社員の意思が反映されているか否かという点です。エンゲージメントは、会社の方針と社員の意思が異なる場合は、互いが納得できるまで話し合い、落としどころ(合意点)を見つけるよう働きかけます。合意点が見つからない場合は、社員が自分の意思で会社を辞める選択肢すらあります。つまり、ロイヤルティは社員が会社に従う"縦の関係"であるのに対して、エンゲージメントでは社員と会社が対等な"横の関係"によって構築される絆です。そしてそれは、社員が満足しているだけでなく、会社の業績にもしっかりコミットできているwin-winの状態にまで高めてゆくことで、職場に善のサイクルが生まれ、「熱意のある働き方」ができる社員が増えてゆくのです。
日本の大手ヒューマンリソースネットワーク企業が、企業の人事担当者・経営者を対象におこなった調査によると、エンゲージメントを高めた会社では、次のような効果を得られることが分かりました。①組織の活性化(約55%)、②社員のモチベーション向上(約43%)、③業績の向上(約40%)、④定着率の向上(約37%)。

これらの結果から、エンゲージメントが高い会社では、社員が仕事に対して主体的に取り組み、それに伴い業績が上がり、会社に対して貢献意欲を持つ社員が増えゆく傾向が明らかになりました。逆に、エンゲージメントが低下している会社は、業績に悪影響を及ぼすケースが少なくありません。エンゲージメントが低い状態というのは、社員が仕事を"作業"として捉えていて、仕事に対する熱意が生まれません。特にITやクリエイティブ、飲食のように、コンペチターやライバル店が多く、新しい発想やサービス精神が求められる業態においては、エンゲージメントの低下は致命傷にもなり兼ねません。

それでは、エンゲージメントを高めるためにはどんな取り組みが必要なのか。キープレスのコラムでもお馴染みのマーケター清野裕司さんに「5つの要素」をご案内いただきました。ぜひ参考にしてください。
①企業理念の共有 会社の理念やビジョンが共有できると、個々が果たすべき役割を理解でき、高い貢献意欲を持つことが期待できます。 ②福利厚生の充実 資格支援や健康維持の取り組みを会社がサポートするなど、福利厚生の充実はエンゲージメントの向上に効果的です。 ③働き方の整備 個々の生活環境に合った多様で柔軟な働き方の整備は、仕事に対するモチベーションや生産性の向上が期待できます。 ④適切な評価設計 評価の基準を明確にし、納得感を得られる制度設計が大切です。適切な人事評価は社員のモチベーションを左右します。 ⑤心理的安全性 他人の顔色を気にせず発言したり行動できる環境は、エンゲージメントを高める上で重要なファクターとなります。
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■記事公開日:2022/02/01
▼構成=編集部 ▼監修=清野裕司 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=PIXTA  AdobeStock

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