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毎年国連が調査している『世界幸福度ランキング』において、日本の順位は先進国の中では最下位(54位)と残念な結果となりました。その理由の1つに、コミュニケーションの希薄さが挙げられます。「空気を読む」という言葉があるように、日本には古くから大勢に従うことが「賢明である」という考え方が根付いており、自分の考えがあっても周囲に合わせてしまう、立場の強い人に反論出来ないなど、意見を言えず(言わず)周りに流されてしまう環境が幸福度の低下を招いている1つの要因ではないかという指摘があります。今、こうした時代遅れな考え方を「会社ぐるみで見直そう」という取り組みが始まっています。
世界で始めて、国の発展を図る指標を、GNP(国民総生産)ではなくGNH(Gross National Happiness:国民総幸福)としたブータン王国。2011年に若き国王ワンチュク氏が来日した時は、日本中に『幸福旋風』が巻き起こりました。昨今、よく見聞きするようになったウェルビーイング(Well-Being)の考え方の原点には、まさしくこの『幸福主義』の概念があります。本質的にウェルビーイングとは『生き方の指標』であり、多面的(幸せだと思える、健康的に過ごせる、安心できる等)に幸福感を感じられる生き方を目指す言葉として使われます。ところが今、このウェルビーイング的な在り方がライフスタイルの幸福度を向上させるだけでなく、ビジネスにも大きなメリットをもたらすと考えられ注目されています。
なぜ、ビジネスシーンでウェルビーイングの指針が必要とされるようになったのか。その理由は、働く意義や環境の変化と、少子化による労働人口の減少が影響しています。多くの企業で定年時期の延長(政府は70歳までの就業機会の確保を推奨)が検討されるようになった今、働くことはサラリーを得るために自分の時間を犠牲にすることではなく、「人生を豊かにする手段であるべき」といった論調が増えています。ただそのためには、従業員が健康的でのびのびと働ける仕組みが不可欠。また、労働人口が減少していく中にあっても人手不足を招かないために、収入などの待遇面だけではなく、多面的な幸福感が得られるウェルビーイング経営を実践して、他社との差別化を図り、安定的に組織運営していくことが重要視されているのです。
既にウェルビーイング経営を実践している企業の取り組みを見ると共通項があります。それが、『職場におけるコミュニケーションの向上』です。人間関係が生産性に影響を与えることは産業心理学の観点からも明らかになっており、従業員同士のコミュニケーションが活発化すれば、情報共有がスムーズにおこなわれるようになって業務効率が良くなります。また、メンバーの仕事をサポートする気配りが芽生えたり、仕事に役立つ知識やスキルが共有されるなどの好循環が生まれ、組織の成長を促すことが期待出来ます。こうした効果を視野に入れて、オフィス内のコミュニケーションスペースを充実させる企業が増えています。
※オフィス探訪で紹介している殆どの企業さまは、同様の理由からコミュニケーションスペースを充実させています。
また、『職場におけるコミュニケーションの向上』は、中小企業にとっては最も手痛い離職率を低下させる対策としても効果が期待できるそうです。独立行政法人労働政策研究研修機構の調査によると、初めて正社員勤務した男女の離職理由は、1位・健康状態、2位・労働条件、これらに次いで3位・職場の人間関係となっています。「同僚とそりが合わない」「上司の指示に疑問を感じる」など、人間関係の悩みは大きなストレス要因となり、仕事へのモチベーション低下を招きます。コミュニケーション機会が少ない職場では、当然ながら不和が起こりやすいと考えられます。しかしながら、たとえ不満を抱えていたとしても、対話をすることによって離職を思いとどまったという方も少なくないはずです。ウェルビーイングを高めることで人間関係が良好になり離職率が低下するというのは、大いに納得出来る論証ではないでしょうか。
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■記事公開日:2022/12/12
▼構成=編集部 ▼監修=清野裕司 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=AdobeStock

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