2025年度の春闘では、平均5%前後のベースアップが相次ぎ、過去数十年で最も高い賃上げ水準に達したと言われています。しかしながら、この賃上げの流れがすべての企業に波及したわけではありません。中小企業では、人件費の上昇に対応できる余力が乏しく、賃上げ率は2〜3%程度にとどまるケースが多く見られました。また、業種によっても状況は異なり、製造業やIT業界では前向きな賃上げが進む一方、サービス業や介護・飲食といった分野では、賃上げが限定的にとどまる傾向が続いています。
この構図は、夏のボーナス支給額にも色濃く反映されています。帝国データバンクの調査によると、2025年の夏のボーナスは全国平均で45万7,000円と、前年より増加傾向にあります。しかし、詳細を見るとその実態は一様ではありません。たとえば、東証プライム上場の大手企業では、平均支給額が約100万円の大台に迫り、全国平均を大きく上回っています。一方で、中小企業では30万〜50万円の範囲に集中し、平均を下回る企業も少なくありません。
こうした背景のもと、多くの人がボーナスの使い道として最優先に挙げているのが「将来への備え」です。日本最大級のコンシューマー・マーケティング会社が実施した『ボーナスの消費意識調査』によると、「貯金・預金」と答えた人が約32%にのぼり、「老後資金」「住宅購入」「子どもの学費」など、堅実な用途を重視する傾向が際立っています。
また、資産形成を目的とした活用も広がっており、NISAや投資信託、iDeCo(個人型確定拠出年金)などにボーナスを充てると答えた人は約49%。物価上昇や将来不安を背景に、単なる貯蓄だけでなく、資産運用への関心が高まっていることがうかがえます。片や、旅行や外食、新しい家電製品や日常の生活費などへの支出は20%未満にとどまり、消費よりも「貯める・増やす」意識が優先されているのが現状です。
ボーナスの使い道については、世代ごとの傾向も見られます。20〜30代の若年層ほど保守的で、結婚や子育て、年金制度の先行き不安などを背景に、早くから貯蓄や資産形成を優先する傾向が強く、将来リスクに対する生活防衛の意識が日々の金銭感覚にも影響しているようです。
一方で、40代以上の中高年層は、すでに家庭や住宅を持つ人が多く、住宅ローンの返済や子どもの教育費など、目前にある支出に応じて計画的にボーナスを活用する傾向が見られます。貯蓄と消費のバランスを取りながら、ライフステージに応じた資金管理を行っている点がこの世代の特徴といえるでしょう。
■記事公開日:2025/07/29
▼構成=編集部 ▼文・写真=吉村高廣 ▼イラスト=編集部 ▼写真=Adobe Stock