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コロナ禍により働き方が大きく揺れ動いた2020年代前半。この間、AIが職場に浸透し、人材の流動化が進み、企業の構造自体も変わりつつあります。その変化のただ中で、確実に存在感を強めているのが50代を軸としたミドル世代です。
かつては、「役職定年」、「管理の負荷」、「キャリアの終盤戦」などといったネガティブな言葉で語られることが多いミドル世代でしたが、2026年を境に、そのイメージは大きく転換点を迎えると言われます。50代はクールダウンに入るのではなく、むしろ、「もう一段伸びる世代」へとなっていく。これまでの固定観念を揺さぶる働き方が始まっています。

役割の縮小ではなく「延長戦」に突入

多くの企業で、管理職やミドル層の役割が変わり始めています。意思決定はAIやデータ分析がサポートし、組織運営はスリム化やプロジェクト化が進行中です。その結果、ミドル世代が培ってきた「現場の文脈を読む力」や「部門を越えた調整力」、「リスクを見抜く経験知」を、従来よりも広い範囲で生かせるようになりました。
実際、大手IT・通信企業では、50代を専門職や組織横断プロジェクトのリーダーとして再配置する動きが定着しつつあります。製造業やインフラ企業でも、現場改善や変革を主導する"第二の現場リーダー"として抜擢される例が増えています。役職の上下ではなく「経験をどう使えるか」が評価の軸になり始めているのです。

年齢ではなくスキルで評価される時代

こうした流れを後押ししているのが、評価基準そのものの変化です。企業の目線は、「年齢を前提にした配置」から「スキルを軸にした評価」へと明確に移りつつあります。金融・小売・行政分野では、50代の研修や資格取得プログラムへの参加が過去最大規模に達し、「リスキリングは若手のもの」という考え方は薄れています。実力や専門性を基準に役割や報酬を決める"スキルベース人事"も広がりつつあり、キャリアを左右するのは「何歳か」ではなく「何ができるか」へと置き換わりました。
とくに、プロジェクトを束ねるマネジメント力や世代や部門を越えて合意形成する力を積み上げてきた50代は、AI時代において実行力を発揮しやすい層でもあります。法政大学の研究でも、65歳までの雇用確保を見据え、50代以降のキャリア構築支援が企業の重要テーマになっていくと指摘しており、「2026年はスキルを基盤としてワークスタイルを見つめ直すことが、ミドル世代の価値を上げる決め手になる」と示唆しています。

「会社が面倒を見てくれる」は過去の常識

働き方の前提も大きく変わりました。終身雇用は揺らぎ、役職定年やジョブ型人事が進むなかで「会社が最後までキャリアを保証してくれる」という期待は現実的ではなくなっています。
ただし、これはミドル世代にとって不利な変化ではありません。企業が個人のキャリアを一律に保障しなくなるということは、年齢で一括りにされなくなるということでもあります。経験、専門性、人脈、現場感覚といった"積み重ねてきた価値"を、改めて自分の意思で組み立て直せる余地が広がっているのです。若手ほど経験不足ではなく、経営層ほど現場から離れてもいない。組織の現実と変化の難しさを熟知しているミドル世代は、実は最も「頼りにされやすい立ち位置」であり、その価値を表に出しやすい「極めて有利なポジションである」とも言えるのです。

50代は「守り」から「新たな投資」へ

2026年を前後して、ミドル世代を取り巻く環境は確実に上向いていくはずです。ただし、ここで重要なのは、「誰にでも同じ結果が訪れるわけではない」という現実です。チャンスは広がりますが、活躍できるか否かはその人の姿勢と行動によって大きく分かれます。
企業や周囲から「この人に任せたい」と信頼されるミドル世代には共通点があります。自分の経験を押しつけるのではなく、相手の課題に合わせて使い分けられること。世代や立場の違いを越え、対話を通じて関係を築けること。AIや新しい仕組みに対しても距離を置くのではなく、使いながら理解しようとする姿勢を持ち続けていることです。
こうした人たちは、リスキリングも資格取得で終わりません。「新しい役割を引き受ける準備」として学び、これまで培ってきた人脈や経験と結びつけ、その積み重ねが、自然と仕事や相談を呼び込み株を上げることになる。つまり、50代は"守り"ではなく、第二のキャリア形成に向けて"投資する年代"ということができます。
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■記事公開日:2025/12/23
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=Adobe Stock

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