「英語は通じているはずなのに、なぜか話が前に進まない。」海外で、そんな違和感を覚えたことはないでしょうか。
その原因は、文法や発音の問題ではありません。"日本語の感覚をそのまま英語にしている"ことにあるケースが、実は少なくないのです。
日本では無難で丁寧な表現が、海外では「無責任」「高圧的」「消極的」と受け取られてしまうことがある。これは英語力の問題というより、文化とコミュニケーション様式の違いです。
ここでは、海外ビジネスの現場で特に誤解を生みやすい表現を取り上げながら、「なぜズレが生じるのか」、「どう言い換えればいいのか」を具体例とともに解説していきます。
Please understand. ("お願い"ではなく"命令"に聞こえる)
日本語の「どうかご理解ください」を直訳した Please understand. は、一見丁寧に見えますが、英語では「理解しなさい」と言い切る形になり、ビジネスシーンでは配慮のない、高圧的な印象を与えます。海外では、相手に理解を求めるときは、感謝やクッションを添えるのが基本です。
たとえば...
We appreciate your understanding.
(ご理解に感謝します)
(ご理解に感謝します)
Thank you for your patience.
(お待ちいただき、ありがとうございます)
このように言い換えるだけで、伝わり方は大きく変わります。(お待ちいただき、ありがとうございます)
I'm sorry. ("すみません"よりも重い)
日本人は会話の潤滑油として「すみません」を多用します。しかし英語の I'm sorry. は、単なるクッション言葉ではなく、「責任を認める表現」と受け取られるのが基本です。クレームや契約、品質トラブルの場面では、軽い気持ちで言った sorry が、法的な意味合いを帯びることすらあります。
非を認める必要がない場面では...
Thank you for pointing this out.
(ご指摘ありがとうございます)
(ご指摘ありがとうございます)
I understand your concern.
(ご懸念は理解しています)
といった表現のほうが、安全で建設的です。(ご懸念は理解しています)
We'll consider it. (前向きに聞こえていない)
「検討します」は日本のビジネスでは前向きな言葉ですが、We'll consider it. は英語では「やんわり断るときの定型表現」と受け取られることが少なくありません。本当に検討する意思があるなら、海外では「いつまでに」、「どんなプロセスで」を示すことが最低条件です。
We will review this internally and get back to you by Friday.
(社内で精査し、金曜日までにご回答します)
ここまで言って、初めて「前向きな検討」と受け取られます。(社内で精査し、金曜日までにご回答します)
Maybe や I think ("慎重さ"ではなく"頼りなさ"が強調される)
日本では断定を避けることが美徳とされます。しかし海外のビジネスシーンでは、曖昧な言い方はそのまま判断力の弱さと結びつけて受け取られがちです。
Maybe we can...
(もしかしたら〜できるかもしれません)
(もしかしたら〜できるかもしれません)
I think it might be...
(私としては〜だろうと思います)
といった表現が続くと、「この人は結論を出せない」という評価につながりかねません。(私としては〜だろうと思います)
もし断定できない場合は...
One possible option is...
(考えられる選択肢としては〜です)
(考えられる選択肢としては〜です)
From our perspective...
(私たちの視点からすると/当社の立場からすると)
のように、立場や論点を明示することで、プロフェッショナルな印象になります。(私たちの視点からすると/当社の立場からすると)
I will do my best. ("誠意"ではなく"不確かさ"が伝わる)
「頑張ります」、「ベストを尽くします」は日本では誠実さを示す象徴的な言葉ですが、英語では「結果を約束しない表現」です。海外のビジネスで求められるのは、気持ちよりもコミットメントです。
I will finish this by tomorrow.
(明日までに終わらせます)
(明日までに終わらせます)
We can deliver this by the end of the week.
(今週末までに納品できます)
このように期限と行動を具体的に示してこそ、信頼されるビジネスパートナーになります。(今週末までに納品できます)
POINT
ここで挙げた表現はいずれも「間違った英語」ではありません。文法的には正しく、意味も通じます。だからこそ、多くの日本人が違和感に気づかぬまま使い続けているのです。しかし実際には、そのひと言が相手を失望させたり、信用を損なったりするケースも少なくありません。日本語の丁寧さや謙虚さ、曖昧さは、英語のビジネス環境では、時に優柔不断さや無責任さ、非論理的な態度として受け取られてしまうことがあります。
ビジネス英会話を上達させるポイントは、単語力や構文力の向上だけではありません。「相手は今、YesかNoの判断を求めているのではないか?」と想像し、相手が求めている"結論"を先回りして言葉にすること。これこそが、信頼を勝ち得る第一歩です。
