過去3年間で5回もの値上げを繰り返してきたマクドナルドが、3月12日から6度目の価格改定をおこないました。ハンバーガーの価格は170円から190円に、チーズバーガーは200円から220円に。そして、サイドメニューのマックフライポテトSサイズも190円から200円に。そうしたなか、マクドナルドの1番人気ビッグマックの価格については480円に据え置かれています。
実はこのビッグマックの価格が、世界各国の「通貨の価値」を測るものさしとして使われているのをご存じでしょうか。経済学ではそれをビッグマック指数と呼んでいます。
ビッグマック指数とは、1986年にイギリスの経済誌『エコノミスト』が提唱した"通貨の購買力を比較するための指標"のことで、毎年、約50カ国のビッグマックの価格を調査してアメリカ(米ドル)と比較することで、大まかな為替相場を推測することができます。
"ビッグマックの価格で為替相場の目安にする"というユニークなアイデアは、マクドナルドが世界中で事業展開していて、ビッグマックはほぼ同じ材料や調理方法で提供されていることに起因しています。そういった商品が異なる国(通貨)でどれくらいの価格差があるかを見れば、その通貨の価値(どのように評価されているか)を判断する材料になります。
具体的には、現在日本のマクドナルド(通常店)でビッグマックは480円で買えますが、アメリカでは5.79ドル(約840円)です。この価格差をビッグマック指数に照らし合わせると、「円の価値は米ドルに比べて60%弱でしかない(=円安)」ことになります。このように、ビッグマック指数で国ごとの通貨の価値を知ることができ、またそれは、その国の経済力を測るうえでも1つの手段と言えるでしょう。
今年1月に発表された最新版の「ビッグマック指数ランキング」によると、日本のビッグマック指数は54か国中44位となっています。これは下位20%に位置しており、香港やベトナム、マレーシアなどと同じクラスです。つまりこれは、円の価値が相対的(世界的に見て)に低い水準にあることを示しています。ちなみに、何かとライバル視されがちな韓国では、ビッグマックの価格が593円(36位)で日本との間に110円以上の価格差(=通貨の購買力)がある状況です。
ただこれは今年1月時点での指標であり、その後、トランプ氏がしかけた貿易戦争により、ユーロ圏と中国の通貨価値は急落しています。こうした動きは世界経済に混乱を招くことは間違いなく、ハンバーガーが大好物のトランプ氏がへそを曲げれば、貿易戦争のみならず為替戦争の勃発にもつながりかねません。
■記事公開日:2025/04/28
▼構成=編集部 ▼文・写真=吉村高廣