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ビジネスエリア特集 Vol.9 三重 津

製造品の出荷額が全国トップクラスの三重。
本社機能移転を計画する企業を後押し。

本社機能移転を加速させるか地方創生

災害などのリスク発生時に企業の事業を継続させるための対策は、東日本大震災以降、経営陣の大きな課題の一つとなりました。耐震・免震ビルへの関心、電力供給の確保、防災用具の導入、社員の避難計画、不測時の防犯対策、セキュリティ対策、重要データのクラウド化など平時に体制を整えておきリスク回避対策を講じることは、大都市圏に活動拠点を持つ企業の"常識"と言っても過言ではありません。
こうした万が一の事態に備える事業継続計画(BCP)が注目される中、全社移転ではなく本社の重要機能のみを移転させるという動きが目立っています。そこには国や県が推進する地方創生の一環として、2015年度から始まった本社機能の移転に関わる税制優遇制度の後押しがあるようです。
三重県津市ビジネス街 三重県津市ビジネス街 三重県津市ビジネス街 三重県津市ビジネス街

順調に進んできた三重の工場誘致

三重県は、大阪、名古屋から至近であり、東京からは名古屋経由で四日市市までなら約2時間半という絶好のロケーションを保持する県です。また国内のビジネスジェットの受け入れの先駆けとして注目され、近年ではアジア各国へのチャーター便を増やしているほか、国内各都市への優れたアクセスを誇る中部国際空港セントレアへは、県庁所在地となる津と約45分で高速船が結びます。その他、国際拠点港湾の四日市港や大都市圏を結ぶ高速道路網の充実など、全国でも希有な交通網のセンターを確保しています。こうした三重を東京圏や近畿圏の企業が俯瞰してみると、本社移転という課題には「利便性」で応える位置にありました。

また、すでに製造業に関しては全国有数の産業集積を誇り、盤石なビジネス環境が構築されていることが、工場移転・拡充の抵抗感を低減させていることも間違いないようです。結果として、電子デバイス、自動車メーカー、石油・化学関連のマザー工場(製品の設計、開発といった機能を持ち、他の工場への技能指導などの機能を有する工場)や研究施設の誘致では実績を挙げてきました。三重県雇用経済部企業誘致推進課(以下、企業誘致推進課)によると「製造品の出荷額は全国トップクラス」と「製造業の三重」に自信をうかがわせています。
三重県津駅と中部国際空港を結ぶ高速船

十代の優れた人材が眠っている

製造業はグローバルに展開するのが当たり前の時代です。そんな時代背景の中で順調に進んできた三重の企業誘致の次の課題について企業誘致推進課に聞きました。「製造業が盛んなだけに、県内の理科系・工業系・技術系職業への十代の関心は高い」と言います。高等専門学校は県内に三校あり「どの学校もプログラミングコンテストやロボット競技大会において好成績を収めている」と話します。しかし「就職時に県を離れる若者も多い」と指摘します。

優秀な若い人材が県を離れる理由はどこにあるのでしょうか。暮らす、働くという視点で、県庁所在地となる津市のビジネス街を中心に見聞してみました。駅前の複合ビル、アスト津が市のランドマークとなっています。フェニックス通りと伊勢街道が交差する周辺には、郵便局、裁判所、市役所のほか、銀行・金融関連、保険会社などのオフィスビルが並んでいます。周辺は日本最大級のマリーナや豊かな自然も点在し、過ごしやすい街という印象でした。
三重県津市フェニックス通り

ビジネス拠点として優位なロケーション

三重県の津市は県内の中部に位置します。江戸時代、藤堂高虎が伊勢・伊賀の領主として津に入り城の修理にくわえ、城下町全体を宿場町として整備し、町の活性化を図ったと言います。徳川家康が、外様大名でありながら将軍家から厚い信望を得た藤堂高虎を、当時の大阪・豊臣勢力の監視のお目付役としてこの津を治めさせたのも(津市・津市観光ボランディアガイドネットワークの資料より)、将軍が全国制覇する戦略上、三重の地が重要だと判断したからではないでしょうか。

実際に本社機能の一部を三重県内に移転した東京・港区のクラウド系IT企業、株式会社FIXER(以下、FIXER)に、その移転理由を聞いてみました。「全国の企業様との仕事が多いので、大阪から直通で移動ができることと、東京との距離感も抑えられる三重は魅力でした」と、ビジネスを全国展開させる経営戦略上で、三重県のロケーションが決め手になったと語ります。そして「優れた若い人材がいる」というのもポイントだと話します。
三重県津城と津観音

人材活用と雇用促進

「システムエンジニア、プログラマーを主な人材として捉えると、技術系に関心の高い若者が県内に多く、そのような有力な人材を起用できるメリットは大きい。最先端技術と若い人材との機会創出を全国に発信していきたい」と語ります。こうしたFIXERの未来志向の視点が、県内の人材流出防止に取り組んできた三重県の方針と合致し、これが決定打となって本社機能の一部移転は実施されたようです。

県との縁もさることながら、1)県自体が雇用促進に積極的でチカラを入れている、2)県の企業誘致のバックアップ体制が強い、3)ワンストップ体制で移転に関する悩みにもスピーディに対応・・・その他、4)採用イベントや企業マッチングなども積極的に推進、そして何と言っても、5)自然豊かで暮らしやすい環境、6)2016年の伊勢志摩サミットの開催地という話題性からブランド構築上でも注目される。こうした県の対応力、話題性にくわえ、2015年度から開始した県の本社機能移転に係わる補助金制度を第一号で利用できたことも移転に踏み切った理由だとFIXERは話します。
三重県サイエンスシティ

全国トップクラスの優遇制度

東日本大震災以降に注目されてきた本社機能移転を含めた事業継続計画(BCP)ではボリューム感が拭えず、実施するのは一部の大手企業だという話を聞きます。しかし三重県が提供する本社機能の移転・拡充に関する支援制度を活用することで、本社機能の一部移転であれば、中小企業も含めて実現させる敷居は低くなったのではないでしょうか。

「三重では全国トップクラスの優遇制度を用意しています」。企業誘致推進課によれば、本社機能の移転・拡充に関しては本社機能移転促進補助金や県税の軽減措置の他、さらに国の制度として本社機能移転・拡充企業に対する特例措置も受けることができると言います。

また本社機能以外でも、業種や業態により「成長産業立地補助金」、「マザー工場型拠点立地補助金」、「研究開発施設等立地補助金」など各種補助金が三重県内への企業進出をサポートします。こうした取り組みがFIXER以外にも、資源メジャーの日本法人が三重県に本社を移転するといった成果につながっていると言います。

「あとは時代と共に変化してきた仕事スタイルに企業側がどう対応するかではないでしょうか」と話を継ぎます。実際、情報網が発達した今の時代、仕事場を東京や大阪に固定させてしまう必要はないかもしれません。これからの本社機能移転は、事業継続計画(BCP)にくわえ、経営面・営業面の戦略拠点としての一面、さらには人材のあるところに移転してしまうと言う発想の転換が求められているのかもしれません。
三重県津市津駅前のアスト津

取材手記

東京から四日市市までは約2時間半、県庁所在地の津市まででも3時間かからないで行けるのが三重。東京駅で新幹線に乗車し、パソコンを開きメールチェック、企画書や見積書の確認をしていると、あっという間に着いてしまいます。本当に近さを実感しました。すでに実績のある製造業の工場誘致にくわえ、将来はIT分野の本社を集積させたいと語っていましたが、そう遠い未来ではないような気がしました。編集部ライター・渡部恒雄
三重県津市フェニックス通り
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■記事公開日:2016/04/01 ■記事取材日: 2016/03/14 *記事内容は取材当日の情報です
▼編集部=構成 ▼編集部ライター・渡部恒雄=文・撮影 ▼KAME HOUSE=イラスト地図 ▼取材協力・空撮等資料提供=三重県雇用経済部企業誘致推進課・株式会社FIXER

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