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ビジネスエリア特集 Vol.18 渋谷

東京五輪を追い風に渋谷が変わる
若者の聖地から、大人のビジネスエリアへ

100年に1度の大規模再開発が進捗中

東京で育った中高年諸氏の中には、渋谷の記憶を辿るとプラネタリウムと結びつく方も少なくないと思います。1956年に竣工した東急文化会館(現・渋谷ヒカリエ)の屋上にはプラネタリウムの巨大なドームが鎮座しており、小学生の課外授業では定番の訪問先でした。渋谷の歴史を紐解くと、プラネタリウムの建設は「地味で不人気な渋谷の復興」という背景があったそうです。以後、1973年のパルコ開業、1979年の109開業により、渋谷は"若者文化の聖地"として世界中から人が集まる街へと変貌を遂げました。

若者の街から脱却して次世代産業のプラットホームへ。そんなビジョンのもと、2012年にオフィスと商業施設からなる大型複合ビル「渋谷ヒカリエ」が竣工。ところが期待に反して、渋谷駅東口周辺に劇的な変化は見られず、些か拍子抜けしたビジネスパーソンも少なくなかったはずです。しかしそれは"100年に1度"と言われる大規模再開発の序幕に過ぎず、2013年から新たに、渋谷駅南街区、渋谷駅桜丘口街区、道玄坂一丁目駅前街区、渋谷駅街区の4つの駅前街区で再開発が同時にスタート。新しい価値を創造する最先端オフィスビルと周辺ビジネスエリアの再生、さらにはインフラ整備が急ピッチで進んでいます。
 国際競争力の一翼を担う関西圏最大の経済都市

復活!渋谷 BIT VALLEY(渋谷駅南街区)

Google日本法人が六本木から渋谷に帰ってくる。そんなニュースが飛び込んできたのは1年前のこと。オフィスを構えるのは、渋谷駅南街区に9月13日に竣工した「渋谷ストリーム」です。正式移転は2019年5月。これを機にこのエリア周辺地域は、再び日本最大のITビジネスの集積基地へと返り咲くと目され、隣接する渋谷駅桜丘口街区と共にCreativeベンチャーの移転ラッシュが予測されています。

それに拍車をかけようというのが、渋谷に本社機能を置くサイバーエージェント、ディー・エヌ・エー、GMOインターネット、ミクシィといったジャパンITの覇者たち。渋谷区とタッグを組み、「渋谷をIT分野の世界的な技術開発拠点・教育拠点にすること」を目的としたプロジェクト『SHIBUYA BIT VALLE』を発足。このキックオフミーティングには、全国から新進のITベンチャーや学生たちが集まりました。

2018年9月の『BIT VALLEY 2018』における基調講演を動画でご覧いただけます。https://bit-valley.jp/

また、渋谷ストリームの前面を流れる「渋谷川」は度重なる洪水被害を起こしたことから改修工事が行われ"水のないコンクリート護岸"になっていました。これを再開発に伴い官民連携で再生。清流復活水を活用した水景施設を整備することで川の流れを復活させ、川沿いには緑豊かな600mもの遊歩道を設けるなどして、ハチ公に並ぶ待ち合わせスポットになることが期待されているそうです。

Creative Workerの集積地へ(渋谷駅桜丘口街区)

現在渋谷で進められている再開発プロジェクトの中でも、著しく街が変わり、劇的な変化を遂げるのがJR渋谷駅の南西部に位置する渋谷駅桜丘口街区でしょう。この街区はA・B・Cの3つの地区に分けて再開発が進められ、2023年には渋谷駅南街区同様、Creative ベンチャーなどをも視野に入れたハイグレードオフィスと商業施設からなる大型複合ビルが、そして近隣にはマンションの建設が計画されています。

実はこの街区は、すり鉢状をした渋谷の地形の"谷底"にあたり、加えて国道246号線と首都高速を横断した分断立地とあり、渋谷の中でも人気の薄いエリアでした。ここをテコ入れすることで、渋谷のビジネスエリアとしての価値を上げようというのが今事業の目的です。これを実現すべく渋谷区では、国道やJR線とつながる"歩行者ネットワーク"を構築して、地域分断を解消する大規模なインフラ整備を行います。

こうした変化に伴い、開発周辺地域には多くの中小オフィスビルの建設が予想されます。事実、立ち退きが完了してゴーストタウン化した再開発周辺エリアを歩くと、再開発に先がけて古いビルの解体が所々で進捗。中小規模のオフィスビル建設が計画されているそうです。今はまだ全貌が見えない桜丘口街区ですが、5年後にはCreative Workerが闊歩する、渋谷らしいビジネスエリアが誕生しているかも知れません。

新ビジネスの創出拠点へ(道玄坂一丁目駅前街区)

1970年代に誕生したパルコや109以前、渋谷の文化的ランドマークになっていたのが、渋谷駅東口の東急文化会館であり、西口(道玄坂一丁目駅前街区)で約50年の歴史を刻み、2015年にその幕を閉じた東急プラザ渋谷です。現在は、東急プラザ渋谷の跡地と、隣接したエリアを一体開発するプロジェクトが進捗中。建設中の複合ビル「渋谷フクラス(2019年竣工)」のオフィスフロアには、GMOインターネットグループの入居が決まっています。また市街地再開発計画を見ると、新ビジネス創出の拠点となる"産業進出支援施設"を渋谷フクラス内に設けてスタートアップ企業の支援を行い、周辺エリアに積極的な誘致を実施。新しいビジネスエリアの形成も視野に入れているそうです。

広い視野で「道玄坂エリア」を俯瞰すると、国道246号線から道玄坂までの一帯は、小規模飲食店が密集するかなりディープなエリアと言えるでしょう。かの忠犬ハチ公も主人の帰りを待つ間、このエリアで酔客から焼き鳥のご相伴にあずかり腹を満たしていたそうです。
仮に一丁目の駅前街区が先進的かつ劇的な変化を遂げたとしても、そのすぐ隣からは夕方になると焼き鳥を焼く煙が漂ってきたら本末転倒......
そんな声もあるようですが、人種や性別、あらゆる垣根を超えた交流を目指す渋谷ならでは、それもまた"ボーダーレス"な人気のビジネスエリアになるかも知れません。

課題だった"鉄道迷路"を解消(渋谷駅街区)

間もなく渋谷の新しいランドマークが誕生します。それが渋谷駅街区で建設中の「渋谷スクランブルスクエア」。ハイグレードオフィスと商業施設からなる、高さ230mの渋谷最大の複合施設で、サイバーエージェント、ミクシィなどが入居するそうです。この他、渋谷駅街区は2つの商業ビルが2028年に竣工予定で、「100年に1度の大規模再開発」と言われる渋谷再開発プロジェクト最大の目玉となっています。

そんな華やかな話題がある一方、JR線、東京メトロ銀座線、東急東横線、東急田園都市線、半蔵門線、副都心線との接続拠点になるこの街区には、マストな解決課題があります。各路線までの迷路のようなルートを解消しないことには、いくら地上を整備しても「ビジネスエリアとしては認められない」と考えるビジネスパーソンも少なくないはず。今回の再開発プロジェクトではこの課題に1つの答えを出しました。

2019年には東京メトロ銀座線のホームを現在の場所から東に約130m移転。結果、JR渋谷駅の改札からは今より離れるものの、当街区の地下に新たに設けられる「東口広場」を、JR線、東京メトロ銀座線、京王井の頭線といった高い位置にあるホームと、東急東横線・田園都市線、東京メトロ半蔵門線・副都心線などの地下にあるホームを結ぶハブスポットと位置づけることで"鉄道迷路"を解消しようというもの。このプランが本当に上手く機能すれば、渋谷は今よりもっと働きやすいビジネスエリアになるはずです。

取材後記

渋谷にオフィスを構えて、20年以上街の変遷を肌身をもって実感してきましたが、とくにここ2年の渋谷は怒涛のごとく変貌しつつあります。
今回歩いた駅周辺以外のエリアでも、ついこの前まであったはずのビルが解体され、街の至るところにアートウォール(工事現場の仮囲い)が設けられています。その1つの要因は2020年の東京五輪を視野に入れたインバウンド対策もあるのでしょうが、本質的には長期的に見た街の成熟(ビジネスエリアとしての興隆)こそが最大の目論見であるように思います。

1970年代以降の渋谷は「若者文化発祥の地」といった曖昧な定義で語られてきたものの、ビジネスエリアとしては極めて個性の薄い街でした。
そんな渋谷に微かな明光が見えたのは、1999年に渋谷のITベンチャーが発表した「渋谷 BIT VALLEY構想」でした。しかしながらその構想も結果を出せずに頓挫。理由は情報関連事業に相応しいオフィスビルの圧倒的な不足だったそうです。つまり現在行われている再開発は、渋谷にとってのリターンマッチ。東京五輪という追い風も味方して、良い結果が期待できそうです。


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■記事公開日:2018/11/29 ■記事取材日: 2018/11/15・16・22 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣  ▼撮影=吉村高廣 ▼イラスト地図=KAME HOUSE
▼再開発計画概要/協力=渋谷駅中心地区基盤整備都市計画の概要(渋谷駅周辺整備課)/渋谷商店会 ▼画像素材=PIXTA

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