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ビジネスエリア特集 Vol.20 新宿

消費の街からビジネスエリアに
進化と変貌を続ける副都心・新宿

国際競争力が求められる日本のヘソ。新宿の底ヂカラ。

新宿駅は、都心部を循環するJR山手線や「エリア特集#15」で紹介した立川方面(多摩エリア)とを結ぶ中央線、私鉄や地下鉄、さらには埼京線などの各線が乗り入れ、一日の乗降客が360万人を超える世界一のターミナル駅です。加えて駅周辺のエリアには、東京都の行政を管轄する都庁舎を筆頭に、副都心のビジネスエリアに相応しい超高層ビル群が摩天楼を形成。さらには、都内有数の繁華街や商業施設が数多く点在するなど、昼夜を問わず人の流れが絶えることがない都市観光スポットにもなっています。

こうしたなか新宿区は、駅周辺地域を軸として『世界に注目され、誰もが行き交う国際集客都市』を合言葉に、街のブランド価値を高めるガイドラインを発表しました。これは、Amenity(快適なまちづくり)、Attractive(魅力的なまちづくり)、Activity(活気あるまちづくり)という3つのキーワードを骨子に、「新宿を世界基準のまちに変えてゆく」という壮大な都市計画です。国際競争力が求められる日本において、新宿は将来を俯瞰しても可能性に満ちたビジネスエリアです。そんな"街"の今をレポートします。
 国際競争力の一翼を担う関西圏最大の経済都市

中小企業が繁華街の外郭に【新宿東口エリア】

人材サービス企業が実施した『新宿の象徴といえば?』というアンケート調査では、歌舞伎町が断トツの1位で、以下、東京都庁、新宿アルタ、伊勢丹新宿店、新宿御苑という結果が出ました。都庁を除けば、いずれも東口のシンボルで、多くの方が「新宿=東口周辺」と考えていることが分かります。反面、東口エリアは繁華街の印象が強すぎ、東京に在住していてもオフィスエリアと認識している方は多くありません。

しかしながら実際の新宿東口周辺は、中・小規模のオフィスビルがエリアの外郭を形成するれっきとしたビジネス街です。
エリアの全体像は、新宿1丁目から6丁目までと、歌舞伎町1丁目と2丁目で構成されており、このうち主だった繁華街は、新宿アルタや伊勢丹新宿店などがある3丁目の一角と、歌舞伎町1丁目という一部の街区のみ。その他の街区には、流通商社、IT、食品、芸能、会計・法律事務所など、多種多様な会社が名を連ねるオフィスビルが連立し、慌ただしくビジネスパーソンが行き交っています。

また、明治通りを境とした東側のエリア(1丁目・5丁目)に進むと、街の印象は一変します。新宿御苑と隣接する好環境ということもあり、賃貸・分譲マンションが数多く見受けられるのもこの街区の特徴です。現在新宿では、あちらこちらで再開発の計画が持ち上がっていますが、この街区についてはそうした声が聞こえてきません。それはきっと、安定感のあるビジネスエリアが構築されているからでしょう。

世界屈指の摩天楼【西新宿エリア】

新宿西口エリアのシンボルといえば、1970年代に淀橋浄水場跡地に計画的に建設された超高層ビル街でしょう。近年は、東京駅周辺のオフィスビルが超高層ビルに再建され、にわかに存在感を示しつつありますが、西新宿のビル街は、今なお世界トップクラスの規模を誇る摩天楼です。さらには、2018年度のIPO企業の本社数も、港区、渋谷区に次ぎ全国第3位と、勢いのある企業が集まるビジネスエリアでもあります。

西口エリアの個性をより一層際立たせているのが、駅前(西新宿1丁目)に広がる「新宿電気街」です。ここは、東京都庁が西新宿に置かれたことで、中・小規模の企業が激増し、それに伴い、交通インフラ(地下鉄)が整備され、商業面でも著しい成長を遂げました。東京の電気街と言えば秋葉原ですが、実はこの新宿電気街も海外のガイドブックで紹介される人気スポット。毎日多くの外国人観光客が訪れます。

このエリアで、実態の見えやすい中・小規模のオフィス街は、電気街を有する西新宿1丁目と、高層ビル街から青梅街道を隔てた北側に位置する7丁目、8丁目の街区になります。東京出身の方の中にはご記憶の方もいるでしょうが、1990年代までの8丁目付近は古い木造アパート街で、目の前に聳える高層ビル街とのギャップが一種独特の雰囲気を醸し出す街でした。今回、久しぶりに歩いてみて、その変貌ぶりにはただただ驚くばかり。そこには、エリアマネジメントが行き届いたビジネス街が広がっていました。

ビジネスエリアの魅力を高める【新宿駅周辺再開発】

2040年を目途に、新宿駅とその周辺地域が劇的に変わります。乗降客数が世界一多い新宿駅ですが、駅の構内が非常に分かりにくく、東口から西口への通り抜けルートは東京在住のビジネスパーソンでも迷うほど。これは「エリア特集#18」で紹介した渋谷駅同様かねてよりの課題でした。そこで東京都、新宿区、各鉄道会社が協議を重ね、世界有数の交通結節点に相応しい新宿駅に造り替える「新宿グランドターミナル構想」が公表されました。

新宿グランドターミナルへの再編に向けたまちづくりの着手について(東京都)
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/05/17/02.html

こうした大規模再開発の背景には、駅や街の利便性の向上はもとより、"都内最大"を誇ってきた商業地としてのポテンシャル(売上高)が、ここ近年は伸びがなく、大規模な駅前再開発が行われている渋谷などと比べて街の魅力が低下していることが大きな要因と考えられます。加えて、1970年代に都市化が急進した新宿駅周辺は、オフィス・商業ともにビルの老朽化が進んでいます。これらの課題を解決することが、新宿が目指す「世界基準のまち」の足掛かりとなるのは間違いないでしょう。

駅周辺再開発計画の公表に先駆けて、2017年にオープンした「バスタ新宿」は、国内300都市と新宿を結ぶ120ものバス会社が乗り入れています。JR新宿駅・新南改札から直結したビル4階に高速バス乗り場、3階には高速バス降り場とタクシー乗降場があり、国内最大のバスターミナルです。昨年のデータでは、1日の平均利用者数は約2万人で、これは成田国際空港の利用者に匹敵します。オープン当初はビジネスや観光などの国内需要が期待された施設でしたが、取材時の印象では、明らかにインバウンド需要に貢献しており、乗降客の半数近くは外国人観光客でした。

日本一のインバウンド都市・新宿

アジア、欧米を問わず、日本を訪れる外国人観光客は年々増えています。なかでも新宿は、浅草や銀座をおさえてNo.1の人気観光スポットになっています。その理由について一般社団法人新宿観光振興会は次のように話します。「新宿には海外からのお客さまの多様なニーズに応えられる観光・エンタメスポットが数多くあります。加えて、地方の観光地にもアクセスしやすいことも大きな要因となっています」。

歌舞伎町にある「ロボットレストラン」や「サムライミュージアム」などはその代表格で、ガイドブックに「日本人が行かないインバウンド観光スポット」として記されており、絶大な人気を誇っているそうです。一方、新宿御苑や東京の街を一望できる東京都庁舎45階の展望室なども大人気で、展望室には外国人の姿しか見当たりません。さらには、西口ガード下の思い出横丁やゴールデン街など、日本人にとっても馴染み深いスポットも同様で、「どこへ行っても外国人観光客ばかり」というのが今の新宿の現状です。

そうした状況を追い風に、いま新宿ではインバウンドビジネスが急増しています。外国人専用の宿泊施設から、レンタサイクルや荷物の預かり所、さらには礼拝堂に至るまで、ありとあらゆるサービスが猛スピードで事業化されています。来年に迫った東京五輪は、東京のイメージを世界に発信する絶好の機会です。それに先立ち、インバウンドビジネスに夢を賭けるベンチャー企業が、続々と新宿に集結しています。

取材後記

振り返ってみると、学生時代、さらには社会人になってからも、あらゆる消費欲求を満たし、最も金を落としてきた街が新宿だったように思います。しかしながら"働く街"として考えたことは、これまで一度もありませんでした。おそらく、長年東京で暮らす中高年の中には、同じように考える方が少なくないと思います。理由は、一種の"猥雑性"です。猥雑性には磁石のように人を引き付ける力があります。ただ、毎日そこに身を置いているといくら金があっても続かない。かつての新宿はそんな"消費の街"でした。

ところが今回、違った視点で新宿の街を歩いて感じたことは、かつては、そこかしこに蔓延していた猥雑性が影を潜め、整頓された利便性の高い街へと変貌していたということです。東口の歌舞伎町やゴールデン街は、観光目的で訪れる子供連れの外国人で連日賑わっています。また、西口の地下通路と一体で整備された中央通りから、新宿中央公園を背にした高層ビル群は、まさに、マンハッタンの五番街からセントラルパークを望む景色のよう。新宿はすでに進化して東京屈指の"ビジネスエリア"になっていたのです。


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■記事公開日:2019/06/03 ■記事取材日: 2019/05/15・16・22 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣  ▼撮影=吉村高廣  ▼イラスト地図=KAME HOUSE
▼協力=(社)新宿観光振興会・新宿観光案内所/参照=新宿駅周辺地域まちづくりガイドライン(新宿区)

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