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ビジネスエリア特集 Vol.21 千葉駅周辺エリア

魅力は"職住近接"のワークスタイル。
駅周辺の相次ぐ再開発で劇的な変貌を遂げてゆく。

千葉駅の建替えは、再活性のプロローグに過ぎない。

千葉市は千葉県のほぼ中央部にあたり、東京都心部まで約40kmの地点にあります。その起点となる千葉駅は、JR総武線、内房線(館山方面)、外房線(鴨川方面)、成田線(成田方面)、総武本線(銚子方面)など、県内各所への発着点となるターミナル駅であり、さらには千葉都市モノレール千葉駅、京成千葉線京成千葉駅にも容易にアクセスできるなど、千葉の玄関口に相応しい鉄道インフラの要衝となっています。

千葉市ではここ数年、大型商業施設の閉鎖が相次ぎました。2016年11月に千葉パルコが閉店。翌2017年3月には千葉三越も閉店。1990年代初頭までは中心的な商業エリアとされていた駅前大通りも、かつてのような賑わいはありません。そこで現在千葉市では、市の将来像を俯瞰し、取り組みの方向性を明確化したグランドデザインが策定され、まず、千葉駅周辺の魅力を高める都市機能の整備を行う再開発事業が進んでいます。
その先陣を切って、昨年、駅ビルの「ペリエ千葉」が開業。7年以上にも及ぶ駅の建替え工事も終わり、本館とエキナカ、高架下、地下フロアを合わせた延べ床面積は従来の約2.5倍に拡大。求心力の失速が懸念されつつあった市街地ですが、この千葉駅の建替えが、再活性の起爆剤になることは間違いないでしょう。
 国際競争力の一翼を担う関西圏最大の経済都市

千葉駅周辺の一等地【富士見エリア】

1990年代初頭までは千葉駅周辺で最も賑わっていたのが、駅前大通り沿いの富士見エリアです。千葉そごうを筆頭に、千葉三越、千葉パルコ、さらにはセントラルプラザといった大型の商業施設が連立して、大勢の人で賑わっていました。ところが、92年に千葉そごうが現在地(新町エリア)に移転したことで、まさしく「潮が引くように」人の流れも変わり、次々と大型商業施設が閉店。連日買い物客でにぎわった駅前大通りも、現在はほぼ、事業所を置く企業のビジネスパーソンたちの"働く姿"しか見受けられません。

こうした富士見エリアの変遷については、今回の取材でお話しを伺った方々からは、「エリアの求心力」といった観点から、現状に対する悲観的な意見が多く聞かれました。しかし、実際に現地を歩いてみる限りネガティブな要素は全く感じられず、むしろ非常に働きやすいビジネスエリアであるように思えました。富士見エリアは、いわゆる駅前のメインストリートに面した一等地です。したがって、公共交通機関の利用といったことを考えても極めて優れたエリアと言えますし、何より、営業効率が抜群に良いはずです。

千葉県最大・関東有数の商業拠点として栄えた、以前の富士見エリアの歴史を知る方々にすれば、街を闊歩する人が減って寂しい思いもあるのでしょうが、このエリアは今なお、金融・保険機関などの多くの集積があり、千葉市経済のボトムを底支えする中心地と言っても過言ではありません。また、市が策定した『千葉駅周辺の活性化グランドデザイン』においても「東エリア」の中心地区として"多様な人が集い、賑わうまちづくり"がエリアビジョンとして明文化され"恒常的な賑わいの創出"が目標化されています。

将来像を描く再開発【駅前業務・商業エリア】

千葉駅舎と駅ビルの大規模リニューアルに続き、現在、駅前の業務・商業エリアにおいては、新しい複合ビルの建設計画が進捗しています。これを契機として千葉市では、前述した『千葉駅周辺の活性化グランドデザイン』を軸に、「50年先の未来をイメージして、概ね20年先の将来像」を描き、市民、まちづくり団体、大学、そして企業や経済団体などとグランドデザインを共有し、相互の連携・協働が始まりました。

▼千葉駅周辺の活性化グランドデザイン(千葉市)
https://www.city.chiba.jp/toshi/toshi/toshinseibi/granddesign-sakutei.html

その皮切りとして来年(2020年)、千葉駅西口(B工区)に総合病院、商業施設、住居、更には公園などの機能を備えた3棟の再開発ビルが誕生します。この再開発ビルと2013年に竣工した西口(A工区)の再開発ビルWESTRIO(ウェストリオ)、そして千葉駅がペデストリアンデッキ(立体歩道)で繋がることにより、西口エリアの歩行環境及び回遊性の向上を図る計画となっています。
さらに、2022年には、東口駅前の民間ビル3棟が建て替えられて、1棟に集約された大型複合ビルが竣工予定。各々の施設が隣接する、新町・新田町エリア(西口)、富士見エリア(東口)の街並みと人の流れが大きく変わり、活性化することが期待されています。

千葉駅周辺には、複数の商店街が形成されており、加えて、全く異なる業態の中小企業が数多くオフィスを構えています。このエリアを活性化させて回遊性を高めてゆくためには、それぞれの特色を活かしたまちづくり(再開発)が肝心です。これについて千葉市経済農政局経済部は次のように話します。
「千葉市はポテンシャルの高いビジネスエリアです。ところがこれまではそれを存分に発揮しきれていませんでした。そうした意味では、千葉駅の大リニューアルに始まり、西口駅前、さらには東口駅前の再開発と、"新生・千葉市"に向けて、着々と進んでいるところです。手応えを得るのはこれからです」。


※掲載の完成予定CGは、計画段階の図面を基に描き起こしたものです。

大願成就のパワースポット【中央エリア】

中央区役所から千葉県庁にかけての中央エリアは、中央区役所や千葉県庁をはじめとして公的機関が集中する一帯で、その周辺には、中小規模のオフィスビルや、商業・サービス業などが集積しています。またこのエリアは、一見するとお堅いオフィス街の佇まいを醸しながらも、アニメやコミック関連商品販売の国内最大手「アニメイト千葉」が店舗を構えることから、それに関連したアニメ関係の店舗がそこかしこに見受けられるなど、緩急に富み、不思議な躍動感があるビジネスエリアを形成しています。

昨年千葉市は、世界中のアニメファンが選んだ『訪れてみたい日本のアニメ聖地88』に選ばれました。その後"聖地巡礼マップ"が作成されるなどして、各地からアニメファンが訪れています。またこうした現状を後押しするように、千葉都市モノレールでは、千葉が舞台となったアニメ作品で車体にラッピングを施したり、関連グッズの販売なども実施。アニメを文化的な位置づけとして捉えて、インバウンドも視野に入れた世界的な"千葉ムーブメント"が、この中央エリアから巻き起こることも夢ではありません。

また、中央エリアの一角には、関東のパワースポットとして人気の千葉神社が佇みます。北斗七星の神様とされている"妙見様"をまつる神社で、厄除開運や八方除の神社として古くから知られており、源頼朝や日蓮聖人なども、「あらゆる守護能力がある神様」として崇拝していたそうです。現在は、年明けの仕事始めや、春の年度始めには多くの地元企業が参拝したり、新しい事業や大規模プロジェクトの始まりなどにも、この千葉神社を詣でて大願成就の御祈願を受けることが慣わしになっているそうです。

職住近接を軸として推進【企業立地の優位性】

千葉市は東京の南東に位置しますが、フェーン現象の高熱が影響しないため大きく気温が上がらず、夏は東京よりも気温が低くなるという特徴があります。逆に、冬場は晴天が多く温暖な日々が続きます。こうした気候風土の良さに加え、県庁所在地であり政令指定都市でもあることから、多様なインフラが整備され、東京都心部や空港(成田・羽田)までのアクセスにも優れています。これら数々の"居住環境の良さ"は、そのまま企業立地のメリットとしても後押しできるものと、千葉市経済農政局経済部は分析しています。

その理由は、千葉市が推奨する『職住近接』のワークスタイルにあります。千葉市では、街の魅力やビジネスエリアとしてのポテンシャルを前面に打ち出した『企業立地セミナー』を定期的に開催しています。セミナーでは、①優れた交通アクセス、②有利なビジネスコスト、③豊富な人材、④快適な居住空間などが示されます。中でも強調されるのが4番目の"快適な居住空間"に紐づいた『職住近接』の優位性です。事実、通勤流動の割合を見ても、市内勤務が58.0%と高い一方、都内勤務の割合は21.4%と低く、いかに職住バランスが良いかが分かります。さらに、昼夜間人口比率に至っては、97.9%と首都圏政令市の中では突出して高い拠点性を誇っています。これらは、長時間通勤や満員電車の問題を解消して生産性の向上を目指したい企業にとっては、見過ごせないポイントと言えるでしょう。

取材後記

千葉駅を出るとまず目につくのが、1988年に開業した懸垂式の千葉都市モノレールです。懸垂式は、急カーブにも対応出来る構造的な優位性があるそうで、ビルや住宅が入り組んだ千葉市街地にはピッタリの交通インフラと言えるでしょう。建設にあたっては、一部否定的な意見もあったそうですが、実際に今回の取材で市街を巡る際、千葉駅を起点として主要ビジネスエリアにピンポイントでアクセスできる点で大変便利でした。市外から訪れる土地勘のないビジネスパーソンにとって大きな安心材料になるはずです。

さらに、新たな交通手段の導入も計画されています。それは"シェアサイクル"の導入です。その一環として現在、導入効果や課題を明らかにするために実証実験を実施しています。これは、千葉市らしい生活スタイルである『ちばチャリスタイル』の実現に向けて、市民や事業者と共に自転車を活用したまちづくりを推進し、環境にやさしく、健康にも良い自転車を自発的に利用してゆこうというもの。まさに『職住近接』を標榜する千葉市ならではの"新しいインフラ整備"に向けた取り組みと言えるでしょう。


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■記事公開日:2019/08/28 ■記事取材日: 2019/08/07・09・14 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣 ▼撮影=吉村高廣 ▼イラスト地図=KAME HOUSE
▼取材協力=千葉市経済農政局経済部・千葉市観光情報センター ▼画像素材=PIXTA

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