ビジネスマンのメンタルヘルス ビジネスマンのメンタルヘルス

ビジネスマンのメンタルヘルス

Vol.10ストレスをコントロールしてタフになる


国会議員をめぐる不祥事が後を絶ちません。そこでいつも思うのは、「限りなく黒に近い」と糾弾されながらも、顔色一つ変えない当事者たちの神経の図太さです。統計的に政治家はストレス性疾患や鬱になる確率が低いそうですが、「先天的に打たれ強い人が政治家になっているのか」、それとも「政治の世界でもまれて後天的にタフになるのか」は、ビジネスマンのメンタルヘルスを考える上でも興味深いところです。

ビジネスシーンでは、長時間労働の緩和やさまざまなハラスメントの法整備が成され、「働き方改革」に取り組む企業が増えているにも関わらず、ストレスから心を病む人が絶えません。事実、厚生労働省が2015年におこなった「労働安全衛生調査」によれば、職場の人間関係が原因で、不安や悩み、強いストレスを感じている人の割合は55.7%。なんと、5割以上もいることが報告されています。そこで今回は、「対人ストレスに強い人と弱い人の特徴的な違いは何か」、「ストレスをコントロールしてメンタルアップするにはどんな方法があるか」について、産業カウンセラーの大野萌子先生にレクチャーしていただきました。

対人ストレスに"弱い人"の3大特徴

①常に人の顔色をうかがってしまう 人の顔色をうかがって自分の思いや考えをのみ込んでしまうことの多い人は、常に我慢を強いられ、心に負荷がかかっています。「悪いかな...」とか、「こんなことを言ったらどう思われるか心配...」という気持ちが先に立ち、結果的に人の意見に振り回されがちになります。相手のことを気にしすぎて振り回されるのは良くないことは分かっているのですが、「嫌われたくない」という思いが先に立ってしまい、結果、一人になってからも自己嫌悪に陥り増々ストレスが蓄積されます。
他人の顔色が気になり自分を出せない
②「~べき」で頑張りすぎる 人から頼られたとき、相談を受けた際などに、自分がなんとかしようと人一倍頑張ってしまう。自分に余裕がなくても頼まれると断れず、無理をしがちな人は、自分で自分を追いつめやすい傾向があります。また、自分を犠牲にしてまで頑張っているのに周りが評価や感謝をしてくれないことに、無力感や腹立たしさを感じることも少なくありません。さらには、相手に対しても「〜べき」という要求が強くなり、その要求を満たせない相手に腹を立てることも多く、気持ちに負担がかかりやすくなります。

自分の頑張りを他人にも求めてしまう
③相手の負のパワーに敏感 人の気持ちや状況を繊細に感じ取ってしまう敏感さを持っています。ゆえに他人のマイナスな感情やパワーも自分のことのように受け止めてしまいがちです。人の悪口や悲しみ、怒りなどに影響され、自分の気持ちも不安定になりやすいのです。そうすると、人と一緒にいること自体が苦しくなります。またこうした人は、人の言動に敏感なため、お世辞はすぐに見抜いてしまい、浅い人間関係を好みません。
他人のマイナスパワーに影響される

ストレス耐性は性格が関係している?

ストレスに強いか弱いかは、その人が持って生まれた性格が少なからず影響します。ただ多くの場合は、その後の成育歴(どんな環境で育ち、どんな人に出会ってきたか)が耐性の土台となります。したがって、「その人の性格だから」と簡単に割り切ることはできません。
例えば、親や学校の先生など、自分が従う立場にある相手との関わり方は大きく影響します。「他人の顔色をうかがってしまう」という人は、親との関わり方が影響しているはずです。親の感情次第で「今日はいいけど、明日はダメ」みたいなことを言われると、子どもは「今日はどっちかな...」と顔色を読むクセがつきます。学校の先生も同様で、子ども時代の対人関係はその人のメンタルの土台を育みます。そうした人が、大人になって気分屋の上司の下についてしまうと、ストレスを強く感じることになります。
「相手のパワーに敏感になり過ぎてストレスを感じてしまう」という人も、成育歴が影響するケースが多分にあると思います。良く解釈すれば「感受性が強い人」ということもできますが、自分が置かれた場所(職場等)がそれを活かせる環境であるか否かが問題です。

対人ストレスに"強い人"の3大特徴

①「私は私、あなたはあなた」 「I'm OK, You're OK(私は私、あなたはあなた)」ということを、感覚的に理解している方が多いです。余計なストレスを感じないためには、「自分の問題と他人の問題は別」と、割り切って考えられることが大切です。自分と他人の感情や行動を一緒にしないことが、ストレスから自分を守るコツともいえます。この感覚により適度な距離感が保たれ、他人と対等に関わることができるため、人間関係もスムーズに運びます。
自分と他人の感情や行動を一緒にしない
②プロセスを楽しめる ストレスに強い人は、失敗すらも成長の糧にしようと考えます。例えば資格試験に合格できなかったとしても知識が増えたことをプラスにとらえたり、学んでいく間に出会った仲間との交流を楽しんだり、ポジティブな受け止め方ができます。結果だけにこだわらず、そのプロセスを楽しむことで、ものごとを前向きに考えられるようになり、ストレスにも強くなります。また、自分のやるべきことが明確なのもストレスに強い人の特長です。トラブルが起きても「どうしよう...」と焦るより、解決の手立てを優先して考えることができます。
失敗しても悲観的に考え過ぎない
③1人の時間を大切にできる ストレスに強い人ほど、1人の時間を大切にします。誰かと一緒に過ごし、語り合う場があるのはカタルシス効果(心の浄化作用)を高めるには必要ですが、それと同じく、1人の時間は必須です。人と過ごす時間は楽しい反面、気を使います。誰ともつながらない自分だけの時間を意識的に持つことは心身のリフレッシュにつながり、心の疲れもリセットできます。1人の時間を大切にすることは、自分を大事にすることでもあります。自分の心が心地よい状態を保つことが、ストレスコントロールには最適です。
1人の時間はストレスコントロールに最適

人との適度な距離感を保つことが重要

以上を踏まえると、ストレスに強い人の特徴は、「自分軸」がしっかりあることといえます。反対に、ストレスに弱い人は自分の気持ちよりも、人からどう思われるかという「他人軸」を必要以上に気にする傾向が見られます。「嫌われたくない」「良く思われたい」と思う気持ちが強く、相手の言葉や行動に傷つきやすくなるのです。例えば、何かに誘われたときに気が進まなくても、「断ったら悪いのでは」と思うのは「他人軸」。「自分軸」は、あくまでも「自分が行きたいかどうか」で判断します。
そして、何より大切なのは、人との適度な距離感を保つこと。ストレスに弱い人は、いつの間にか相手と近くなりすぎて、自分が消耗してしまいがちです。さらに、相手と距離が近くなることで、自分の思い通りに動いてほしいという「依存」も強くなりがちですが、相手の気持ちはコントロールできません。そこにストレスを感じて、相手に対して攻撃的になってしまうことも少なくないのです。
人と上手な距離感を持つことは、自分の心にゆとりを持たせてくれます。ストレスに強い人の傾向を知ることで、疲れない心を手に入れる参考にしてください。

Point産業カウンセラー・大野萌子さんからの
メッセージ

私の場合、対人関係によるストレスよりも、忙し過ぎると半ば飽和状態になってストレスが溜まりがちです。こうした状態の時は、ガラリと環境を変えてしまうことが最も有効です。コロナ以前は、出張も多かったですし、「煮詰まってきたな」と思ったときは一人でプチ旅行に出かけて発散することもできました。ところが、それがコロナでできなくなってしまった。昨年「不要不急の外出自粛」が要請されてしばらくの間は、完全にストレスフルな状態でした。そんな中でも、私は食べることが好きなので料理に手間をかけてみたり、今まで観なかったサブスクの動画で自分好みのドラマを観たりしながら、どうにかやり過ごしてきたという感じです。
実際には「そんなことをしているヒマはないのに!」という状況でしたが、ストレスをコントロールするためには、仕事でも悩み事でも、一旦、自分から切り離してしまうことが大事です。それも、忙しい時ほど仕事のことを忘れられるようなことに取り組んで、気分の切り替えをおこなうことが必要です。なぜなら、多忙さがストレッサーになっている時に、その状態を辛抱して仕事を続けていても無駄な時間が過ぎてゆくばかりで生産性は上がりません。仕事では、自分で考えて判断する能力が求められます。我慢ばかりしていると、メンタルリスクのみならず、能力を低下させることにつながるため注意が必要です。

取材協力:一般社団法人 日本メンタルアップ支援機構
東京都中央区銀座1-3-3 G1ビル7階
https://japan-mental-up.biz/
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■記事公開日:2021/10/28 ■記事取材日: 2021/10/08 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼イラストレーション=吉田たつちか

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