今年、創業100周年を迎えた東洋電信電話工業株式会社(TDD)は、企業や公共施設、工場など、社会の基盤を支える通信インフラを担いながら、確かな技術力と信頼を培ってきました。近年は、オフィス電話をスマートフォンやパソコンで利用できる「クラウドPBX」など、新たな通信サービスにも注力し、時代の変化に即した進化を遂げています。
本年5月、TDDは東京・港区海岸三丁目のウォーターフロント「ピアシティ芝浦ビル」へ本社を移転。築き上げてきた基盤(Legacy)を礎に、通信の未来(Future)を切り拓き、「人と人、人と情報」をつなぐ情報ネットワーク・インテグレーターとして、新たな一歩を踏み出しています。その新オフィスを、代表取締役社長・柳田一行氏にご案内いただきました。

Reception Counter
レセプション・カウンターは華美な装飾を施すのではなく、実用的で誠実な印象を与えるものがふさわしい...柳田氏はそう考えていたといいます。
約70坪、社員数11名のオフィスでTDDが設けたレセプション・カウンターは、来訪者に良い第一印象を与え、企業イメージや信頼性を高めようというもの。会社の顔として、プロフェッショナルな印象をもたらしスムーズな来客対応を実現するために、エントランスの壁にはデザイン性と機能性を兼ね備えた『エコカラット』を採用。「これは社員のモチベーションを高める"有効な投資"でもあった」と柳田氏はおっしゃいます。
Refresh Corner
リフレッシュコーナーは、単なる「休憩の場」ではなく、「働きやすさと成果を高める仕組み」として大きな役割を果たします。短時間の気分転換によって集中力を維持できるだけでなく、自然な会話を促し、社員同士の交流や新しいアイデアの創出にもつながります。
さらに、社員のメンタルケアという観点からも有効であり、快適な職場環境は企業の姿勢を示すメッセージにもなります。TDDでは「ホッと安心できるオフィスづくり」を掲げてリフレッシュコーナーを設置。食事やティーブレイクに加え、軽い打ち合わせにも活用できる空間として、組織の活力を後押しするエリアとなっています。
Free address(執務エリア)
新オフィスへの移転を契機に、TDDは社員の創造性と生産性を高めるため、働き方改革に取り組みました。その柱の1つが、執務エリアにおけるフリーアドレス化の推進です。現在はまだ途上段階ですが、各自のノートパソコンを接続すれば、誰もがどの席でも業務をおこなえるよう環境を整えています。
これにより、集中して作業に没頭したい時やチームで活発に議論したい時など、業務内容や気分に応じて柔軟に働く場所を選べるようになりました。一度に全員の働き方を変えるのではなく、各自の業務特性に配慮しながら段階的に新しいスタイルへ移行していく。それがTDDの姿勢です。
Meeting Room
社長の柳田氏が経営者として重視したのは、大正14年の創業以来100年にわたるTDDの歩みと、未来への展望を新オフィスでいかに融合させるか、という点でした。その象徴として、オフィス内に設けられた2つの会議室にそれぞれ異なるコンセプトを与え、ネーミングや内装にその思想を反映させています。
ひとつは、これまでの歴史を象徴する「Legacy」。重厚感のある応接室のような設えにより、伝統の重みを体感できる空間に仕上げていました。もうひとつは、明るく開放的な「Future」。未来を見据えた発想や新たな挑戦を象徴する場としてデザインされ、自由な議論やアイデア創出を後押しします。
Work space /Storage Room
電話交換機やネットワーク機器を使用するには、事前に各種設定や必要データの投入が欠かせません。そのため、TDDでは出荷前にパソコンに接続して必要なデータを入力し、部品を組み込み、動作確認を行ったうえで現場へ届けています。この一連の準備作業を「キッティング」と呼び、現場では設置作業に専念できるよう効率化を図っています。
こうしたキッティング作業を円滑に進めるには作業スペースの確保が不可欠。また、現場で使用するケーブルや機材を保管する倉庫スペースなど、一般的なオフィスとは異なる機能的なエリアの確保も求められました。

ワンフロア化で生まれた効率とつながり。胸を張れるオフィスへ!
東洋電信電話工業株式会社 代表取締役社長 柳田一行さま
新しいオフィス選びの経緯と条件
今回の移転は「100周年だから」といった節目を意識したものではありません。旧ビルのオーナーが亡くなり、建物が売却されることになったため、新たな拠点探しを余儀なくされたのです。そこで三鬼商事さんに相談して物件探しを始めました。
条件は大きく2つ。第一は駐車場です。弊社は電話やネットワークの工事を担っており、機材や資材の運搬に車が欠かせません。最低でも三台分の駐車スペース、もしくは至近で確保できる環境が必須でした。
第二は港区内であること。港区役所から多くの業務を受託しており、担当者からも「区外には出ないでほしい」と要望をいただいていました。ただし港区は賃料が高く、さらに駐車条件を満たす物件となると、候補は限られます。加えて、社員は外回りが中心で、オフィスに常駐するのは管理部のみ。執務エリアの広さよりも工事用資材を置ける収納スペース確保の方が重要でした。これらの条件を兼ね備えていたのが「ピアシティ芝浦ビル」でした。
ワンフロア化がもたらした変化
移転に際して心配していたのは、駅からの距離と周辺の飲食店の少なさでした。しかし実際に入居してみると、ビルは新しく快適で、設備も使いやすく、想定以上のメリットを得ています。
なかでも大きな変化は、業務スペースがワンフロアに集約されたことです。以前は倉庫が1階、執務エリアが2階と分かれていましたが、同じフロアで一体的に業務が行えるようになりました。人や物の動きがひと目でわかり、効率が上がっただけでなく、「大変そうだね、手伝おうか」といった声掛けも自然に生まれています。
また、明るく開放的なオフィスは社員の気持ちも前向きにしました。60年に渡り使用させていただいた旧事務所は、自由度が高く愛着があったものの、建物の古さは隠せず、来客には、「これまたずいぶんと年季の入った会社だな」と映っていたことでしょう。
また、社員にしても誇らしく紹介できる環境ではなかったと思います。対外的に胸を張れるオフィスになったことは、大きな自信につながっているはずです。
帰りたくなる会社であること
移転後ほどなく、労働基準監督署やハローワークの方々とお話しする機会がありました。新オフィスのことを伝えると「ぜひ見学したい」と言われ、実際に足を運んでいただきました。その結果、ハローワークから個別にご指導をいただいた中で、職場環境の印象がリクルーティングの面でも有利に作用することを実感しました。
弊社のオフィスは、華美なデザインや最先端の設備を備えているわけではありません。しかし、お客さまや求職者を安心してお迎えできる、誠実さの伝わる空間へと生まれ変わりました。
その変化は、訪れる方々だけでなく、日々働く社員にとっても大きな価値をもたらしています。営業や技術職の社員は外で過ごす時間が長いからこそ、「帰りたくなる会社」であることが重要です。仕事で疲れて戻ったときに、安心してひと息つける場所であること。それこそが、会社を支える基盤であると考えています。