オフィス探訪 オフィス探訪

オフィス探訪

2020年初頭から全世界に蔓延していった新型コロナウイルス感染症。その影響を受けて、瞬く間にデジタルマーケティングの重要性が高まりました。そうした一方で、環境構築のためのリソース不足からその導入に踏み切れない中小企業が顕在化。デジタルデバイトの格差解消は経営の底上げを図る上で喫緊の課題となっています。
こうした中、デジタル技術の知識に長けていなくても、直感的に扱えるユーザーフレンドリーなツールの提供で、中小企業から支持を集めているのがクラウドサーカス株式会社です。クラウドサーカスはコロナ禍にあって2021年に東京本社オフィスを刷新。新オフィスは業務に応じて最適な場所が選べるABWの思想に基づいて再整備をおこない、「コラボレーション中心の場」として充実を図っています。

"輪"を持ってチームワークを成す

クラウドサーカスでは、コロナ前の2019年からリモートワークや時差勤務を運用。商談はオフラインとオンラインを併用していたことから新型コロナウイルス感染症拡大の影響下においても、速やかにリモートワークへ移行することができたそうです。
オフィスの刷新にあたっては、自由闊達な風土やチームワークを重視して、社員同士がコミュニケートしやすいレイアウトを計画。それを象徴する空間としてオフィスの中央に「サーカス」を設けました。
サーカスの語源はラテン語で、円周を意味します。つまり、どの客席からでもパフォーマンスの感動を共有できる「輪」ということ。これに倣い、オフィス内に輪を設け、社員同士が気軽に対話したり、コラボレーションできるワークスポットを構築しました。さらにステージ上では、プレゼンテーションや社内イベント、新入社員の研修などをおこなったり、舞台の緞帳のようなカーテンで2つに分ければ、異なる内容の会議を同時進行することもできます。

サーカスを軸に音のグラデーションを

オフィスは、業務の内容に応じて多彩なエリアを選べるよう計画されています。各エリアの配置計画をおこなう際、念頭においたのは「業務で発生する音量」だったそうです。誰もが快適に業務ができるよう、コラボレーション空間「サーカス」周辺には、周囲の音を気にせずに業務ができるミーティングスペースやスタンディングカウンターを配置。遠方は、可能な限り静寂な空間になるように半個室の集中スペースを配置するなど、オフィス内で音のグラデーションが生まれるようなレイアウト構成を実現しています。
サーカスに隣接したスタンディングカウンターは、業務の摺り合わせや軽いミーティングはもちろん、長時間の座り作業が辛くなった社員がここで立ちながら仕事をすることも。バーカウンターとしての使い方も想定しており、サーカスでイベントがおこなわれる際は、ケータリングの料理が並ぶこともあるそうです。
ファミレス席タイプのミーティングスペースは、対面でのミーティングやオンラインでの商談など、社内外の方とのオフィシャルな打ち合わせで利用されているそうです。
主にエンジニアやデザイナーが使うことが多い集中スペースは高集中して作業をするための半個室ブースです。コラボレーションの象徴であるサーカスからは最も遠いエリアに位置しており、話しかけられたり、周囲の音に集中を遮られるようなこともなく、自身の業務に没頭することができます。

サーカス4色で脳を活性化させる

フリースペース(執務エリア)でも自由にデスクを選んで仕事をすることが出来ます。チームメンバー同士だけではなく、他部署とも横断的な会話が生まれる空間になるよう、あえて規則性を無視してアトランダムなデスクの配置となっています。
またオフィスを彩るカラーリングも、クラウドサーカスのロゴマークに使われている4色、通称サーカス4色と呼んでいる緑、黄、赤、紫を可能な限りちりばめています。真っ白なオフィスよりカラフルなオフィスの方が、脳が刺激されて新しいアイディアが浮かびやすくなるという研究結果もあるそうで、什器についても、「座り心地の良い椅子を増やして欲しい」という社員からの要望を踏まえ、サーカス4色をベースに様々なデザインの椅子が配置されていました。
クラウドサーカスでは、企業のITに対する投資を「所有」から「利用」へ変えるSaaSプラットフォームを提供しており、その中には11のプロダクトがあります(見込み顧客化=Bow Now、Webサイト制作=Blue Monkey等)。それらのプロダクトには全てテーマ動物が存在しており、その動物のロゴが割り当てられたワークポッドが設けられています。このポッドは音漏れを気にせずWeb会議ができ、自分の好きなプロダクトのポッドを優先的に予約して、いつも同じポッドを使う人もいるそうです。

ソフトウェア開発同様、アップデートできるオフィスづくりを。 クラウドサーカス株式会社 取締役 小友康広さん

「働くに楽を。」を新オフィスで具現化する

日本の会社における働き方の問題点は、長時間労働による生産性の低下だと言われてきました。ところが、日本人の労働時間はここ10年で短くなりましたが生産性は上がっていません。「生産性が改善されないこと」、「楽しく働いている人たちが少ないこと」、これがクラウドサーカスの解決したい課題であり、社会に対して貢献していきたいテーマでもあります。その課題を解決するためにはデジタルマーケティングの力を使って、弊社がパーパス(存在意義)として掲げている「働くに楽を。」を広く浸透させていくことが必要だと感じています。そのためには、まず私たち自身が「働くに楽を。」の体現者にならなくてはなりません。その装置としてあるのが現在のオフィスです。
弊社では、毎年5年先まで視野に入れて人員計画を見直しています。そうした中で、2020年後半にはオフィスが手狭になることが分かっていたので、2019年から在宅勤務や時差勤務などを取り入れてハイブリッドな勤務形態を実践してきました。ただ一方で、オフィスの重要性も認識しており、在宅勤務が長期化して社員同士の偶発的なコミュニケーション機会が無くなってしまうことに大きな危機感を持っていました。そこでオフィスワークと在宅勤務のそれぞれの良い点を理解した上で、どちらか一方に集約するのではなく、「オフィスはコラボレーション中心の場である」と再定義して、その日に実現したい業務に応じて最適な場所が選べるABWの思想に基づいたオフィスづくりをおこなった次第です。

オフィスづくりにあたって重視したもの

オフィスの刷新にあたっては、各部門から代表者を出してもらって、まず「オフィス刷新ワークショップ」を実施。多くの意見を聞いて、可能な限りそれを反映させました。そこで最も重視したのはアップデート可能なオフィスであることです。
我々の事業領域であるソフトウェア開発は、「アジャイル開発」と呼ばれる技法が主流になっていまして、10個の機能をつくろうと思った場合には、全てが出来上がってからリリースするのではなく、1、2個出来た時点でリリースして市場の反応を見ます。そこで想定外のニーズが顕在化すれば、新たな機能をアップデートして完成形を目指します。オフィスづくりも同様で、刷新当初は満足度が高くてもしばらくすれば必ず新たな要望が出てくるものです。そのために多額のコストをかけて完璧と思うオフィスを一度で作り上げるのではなく、毎年一定金額のオフィス改修予算を確保して、社員の声や次に自分たちが目指したい方向性などを併せて、細かくアップデートできるようにしています。
今年の1月、社員にアンケートを取ったところ、オフィスに対する満足度は約80%で、半数以上の社員が「コミュニケーションが取りやすくなった」と回答していました。このように、集めた声から改善点を見つけて、それらを全て公開しながら年に数回アップデートをおこない、オフィスがより良い空間になるよう努めています。

どこにいてもオフィスと変わらない業務効率を

自由な働き方ができる一方で、ABWにはリスクヘッジすべきポイントもあります。オフィスの刷新を機に、リモートワークの支障になっていた、情報システムの社内規定や運用ルールを大きく見直しました。
例えばパソコンの使用についてです。IP制限がある社内システムなどにもアクセス可能なノートパソコンを全社員に配布(現在はデスクトップパソコンはゼロ)。当然ながら、セキュリティが担保された状態ですので、どのような場所でもオフィスと変わらない高いセキュリティレベルを維持した状態で業務を遂行することができるようになりました。仮に端末を紛失したとしても情報漏洩がないような仕組みを導入することができたので、高集中の業務がある日は自宅、コラボレーションが必要な日はオフィスなど、その日の業務スタイルで快適に働ける場所を選びながら業務ができるようにリモートワークの環境設備・制度を強化しています。
オフィスを変えていくときは、50%が新しいもので、残りの50%は既存のものでもいいと思います。なぜなら、その会社が引き継いできた文化と、これから作っていきたい文化の2つがあって、それらがバランスよく折衷されていれば素晴らしいオフィスになると思うからです。 また、弊社は常にアップデートが求められる業種業態なので、オフィスもアップデートできるようなカタチを望みましたが、そうでない業種業態もたくさんあるでしょう。各々の会社が「実現したい未来」を明確にし、それに相応しいオフィスづくりをしていくべきだと思います。
クラウドサーカス株式会社 https://cloudcircus.jp/company/
東京都新宿区西新宿2-3-1 新宿モノリス21F
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■記事公開日:2022/06/20 ■記事取材日: 2022/04/15 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣 ▼撮影=田尻光久

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