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株式会社クリエイト
東京都千代田区神田司町2-2-13 クリエイト本社ビル

https://www.create-group.co.jp/

紙からWEBへ。そしてさらに...

バブル真っ只中の1980年代。求人情報は、正社員やアルバイトの区分けの他、技術者、サービス業、地域別などそれぞれのカテゴリーに分類され、新しい局面に突入した。そして『募集広告』の名でかねてより存在していた新聞折込求人紙も次々に新媒体が登場し、紙メディアの全盛期を迎えることとなる。
仕事を求める人への情報流通が多岐にわたったことで"人材ビジネス"が確固たる市民権を得たのもこの時期だ。バブル世代の中には、斉藤慶子と蟹江敬三が共演した『日刊アルバイトニュース』のテレビCMの名セリフ「人間だったら良かったんだけどねぇ」を懐かしく思い出される方も少なくないことだろう。
求人情報を取り扱う各社が、テレビやラジオCM、電車の額面広告などで販売促進をおこなう状況は今も変わりないが、2005年を前後して抜本的にビジネスモデルを変える変革の波が訪れた。それがインターネットメディアの勃興だ。それは今や"紙からWEBへ"という単なるメディアチェンジのみならず、インターネットを活用した全く新しいサービスがここ数年のうちに登場するとも考えられている。こうした中、新聞折込求人紙のパイオニアとして君臨してきた株式会社クリエイトは、これからのデジタル時代にどう舵を切ってゆくのか。広報宣伝部チーフプロデューサーの村山正博氏に話を聞いた。

紙媒体は時代遅れ?クリエイトの決断

「紙の良さはたくさんありますが、当社も今は、あらゆる面で流れはデジタルに傾いていますね」と村山氏は言う。「あらゆる面で」というのは、情報を得る手段が紙からWEBに移行しつつある中で、それを取り扱う人(クリエイト社員)の"意識の変化"が大きいのだと。

「我々の世代は新聞をよく読みます。それは単に情報を得るだけではなく、記者の視点や思想に触れる楽しみがあるからです。実はそうしたところにビジネスのヒントが隠されていたりするのですが、今は紙媒体離れが顕著で、新聞はおろか雑誌すら読まれません。紙媒体から情報や知識を得ようと言う人が極端に少なくなっているのです」。
新聞折込求人紙を扱う会社の社員が新聞を読まない。危機感を覚えた村山氏は、新聞社から講師を招き「新聞の読み方セミナー」を開催した。ところが中には「そんなことをやって何の意味があるんですか?」という若手もいてなかなか足並みが揃わない。
「彼らの情報源はYahoo!!ニュースを始めとしたスマホの中のニュースサイト。それだけで十分だと思っているんです。だから話題に乗り遅れることも少ないし、逆に、人と違った斬新なアイディアを出せる社員が育ちにくいのです。ただ、時流には逆らえません」。
デジタル時代という巨大ウェーブの中にあって、クリエイトは1つの決断をした。ここ数年で開設した福岡、静岡、大阪、水戸、宇都宮の営業所では、これまで事業のドメインだった新聞折込求人紙の取り扱いをやめ、WEB求人サイトに特化したのだ。

1週間脳から6か月脳に切り替える

こうした中で、ある課題が顕在化してきたと村山氏は言う。「新聞折込とWEBではタイムマネジメントの仕方が全く違うんです。それは、これまでの経験則である程度は分かっていたことですが、WEBに特化した営業所を設けてみて、改善すべき課題としてあぶり出されてきました」。

その課題とはこういうことだ。新聞折込は毎週締め切りがあるため "1週間脳"で動くこととなる。必然的に営業は数字に対して敏感かつ貪欲になるし、スピード感をもって仕事をしなければならない。ところが、WEBの営業は1度契約すれば6か月間掲載が続くため"6か月脳"で仕事をしている。結果、行動パターンもタイムマネジメントも新聞折込より、かなりのんびりしたものになる。
「そもそも紙媒体よりWEBの方が掲載料金は安めの設定です。にもかかわらず、締め切りまでに時間があるからといって掲載期間中の営業活動をおざなりにして、売り上げの目処がたっていない営業マンが少なからずいます。ここは改善しなくちゃいけません」。

ただ、こうした問題が起きるのは営業スキルの問題だけではない。新聞折込の場合は、掲載までに時間がないのでお客さまもすぐに決済してくださるケースが多い。一方WEBは、営業がいくら攻勢をかけても「まだ少し余裕があるよね」とはぐらかされることも少なくない。営業サイドにしてみれば、目処がたてにくい理由もあるのだ。「でも、この程度の問題は軽々クリアして先に進まないといけません。デジタル技術は猛スピードで進んでいるので」と村山氏は言う。

デジタルをロジカルに説明する営業力

求人情報にいま以上デジタル技術の介入が必要なのか?今後どんな新技術が導入されるのか?そんな私の疑問に対する村山氏の視点はこうだ。「これからはWEBサイトの中にVR(Virtual Reality)技術が導入されて、情報提供の在り方が劇的に変わると思います...」。
VRで情報提供の在り方が変わる...村山氏の説明はアナログ人間の私でも大いに納得できるものだった。求職者が職場を決める一番のポイントは"オフィスの雰囲気"なのだと言う。現在それを知る手立ては写真しかないわけだが、そこにVRが導入されればオフィス全体の雰囲気を隅々まで知ることができるようになる。企業側がこれを良しとするか否かは別として、こうした技術が実用化されれば、入社後の職場イメージに齟齬が生れず"ベストマッチングな採用"がおこなえるようになることは間違いない。同時に、オフィス環境に自信がある企業はより詳細な情報提供ができ、自信がない企業はおおまかなものになり、差別化のポイントにもなるだろう。
しかし、求人広告代理店がこうした新技術を会社の武器にするためには、営業マンの質向上が欠かせない。これまでの求人広告営業は、主に"広告スペース"を売る営業だったが、進化し続けるデジタル時代の営業は、そのような新技術を、どのようなタイミングで、いかに用いることが良い採用に繋がるかをロジカルに説明できるコンサルティングの能力が、これまで以上に求められる。

「これからの求人広告営業は、一人何役もこなさなければならない時代になるはずです。技術が進化すれば、それを扱う人間の方も進化しなければならない。のんびりしているヒマなどないはずなんです」。

管理職の自分を変える努力で溝は埋まる

社員のスキルアップは何処の企業も頭の痛い課題である。若手にやる気がないわけではなく、若手との間に横たわる溝を埋めることができず一体感が生まれない。とはいえ、管理職の言い分としては「随分手加減して接しているんだ」という思いがあるはずだ。すぐに弱音を吐く、同じことを何度も聞く、言われたことしかやらない、それでも我慢して根気強く向き合っているはずなのに溝は一向に埋まらない。こうした状況を改善するには"特効薬"があるわけではなく、管理職の地道な営みが求められると村山氏は言う。

「まず管理職は、若手を"指導する"とか"教えてやる"という発想を捨てなくてはいけません。そうした思いが少しでもある限り、話しぶりは自然と傲慢なものになり、いつまでたっても溝は埋まりません。高圧的だったり、先輩風を吹かせるような上司を、今の若手は嫌います。自分の方からおりて行って若手に寄り添うよう、管理職の方が"自分を変える努力をすれば"状況は必ず改善されます。でもね、皆さんこれがなかなかできないんですよ。プライドがあって(笑)」。

不透明な東京五輪後にはばたく企業へ

将来的にはいろんな課題があるにせよ、現在の有効求人倍率は全国平均1.5倍(東京2倍)と、相変わらず人手不足が続いている。求人業界は相当潤っているのではないか?そのあたりを単刀直入に聞いてみた。
「潤っていたのはこれまでで、東京五輪が終わった後は相当な不透明感を感じています。これは弊社のみならず、この業界の人たちの共通した認識です」。

分かりやすい例を挙げれば、1年ほど前までは"最大の売り手市場"と言われた建設業界だ。すでに現場作業員や職人の需要は減り、求人は沈静化しつつある。つまり、これまでの求人業界は"五輪需要"のバブルだったのだ。だからこそそれが弾ける前に、ハイエンドな求人のシェアをできるだけ多く獲得しなくてはならない。求人情報企業は、生き残りを賭けたレースの真っただ中にあるのだ。
「そんな中でも夢を語れる会社でありたいですね。そのためには会社のトップを筆頭に、役員や管理職クラスの人たちが、まず率先して夢を語りかけてゆかなくてはなりません。そうすれば若い人たちも、一生懸命頑張りたい!ついていきたい!と思えます。若手社員は深いところに熱いモノを持っているんです。私はそれを知っています」。

若手にはモチベーションを与えなければいけないと村山氏は言う。しかもそれは、売り上げを達成した時のインセンティブのようなものではなく、人から感謝されたり、仕事にやりがいや手応えを感じたり、そんな"ウェット"なものなのだと。企業を成長させてゆくのは若手たちだ。その潜在能力を引き出すのがベテランたちの役割だ。そこにどういうカタチで貢献をできるかを、村山氏は真剣に模索している。
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■記事公開日:2020/02/10 ■記事取材日: 2020/01/17 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣 ▼撮影=田尻光久

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