水とエネルギー、そして災害対策。人々の暮らしと社会インフラを支える領域で事業を展開する株式会社トーホーは、創業50周年を迎える節目に、東京支店の移転を実施しました。いまやオフィスは単なる執務スペースではなく、企業の姿勢や事業の方向性を映し出す場です。新たな拠点を構えることは、組織の在り方を見つめ直す契機にもなります。
今回の移転には、働く環境の刷新だけでなく、部門間連携の強化や業務効率の向上を通じて組織の価値創造を高めるという狙いがありました。その変化はすでに数字にも表れ始めているといいます。東京支店長の小松和永さまと、移転プロジェクトを主導した梶西頼尊さまに、移転の背景と新オフィスに込めた思いを伺いました。

環境を整え組織を変える オフィス移転がもたらした革新
拠点と仕組みを変え働き方を刷新
東京支店が現在の住友不動産芝ビル2号館へ移転したのは、昨年8月12日のことです。以前のオフィスは30年以上同じ場所に構えており、「50周年という節目に、新たな挑戦を」という機運が社内で高まっていました。移転はその象徴的な一手でしたが、背景にはもうひとつの動機があります。「働き方そのものを刷新したい」という強い意志です。
新オフィスではフリーアドレスを導入し、長年の課題であった「書類があふれる机」からの脱却を図りました。環境を変えることで意識が変わり、新たな行動が生まれる。そうした変化を意図的に引き起こすための、戦略的な移転でもありました。
BCPを念頭にオフィスビルを選定
物件選びの第一条件として掲げたのは、「水害ハザードマップの域外であること」です。御徒町から田町・品川にかけて候補を検討し、最終的に選定した現ビルは、東京都のハザードマップにおいて浸水リスクのないエリアに立地しています。
さらに決め手となったのが、受電設備が8階に設置されている点です。多くのビルでは電気室が1階や地下に置かれているため、浸水と同時に全電源が失われるリスクがあります。現ビルはその構造的リスクを回避しており、浸水時でも電力供給が維持される設計となっています。
当社は地下水を掘削・ろ過して供給する事業を営んでおり、東日本大震災においても提供した「地下水活用システム」は断水することなく稼働し続けました。いかなる状況下でも事業を継続できること。それは当社の存在意義そのものであり、BCP対応はオフィス選定における最優先事項でした。
フリーアドレスがもたらした変化
フリーアドレスの導入により、情報を紙ではなくデータで管理する習慣が自ずと定着し、業務スピードの向上や人員効率の改善にもつながっています。
とりわけ大きな変化として挙げられるのが部門間コミュニケーションの活性化です。以前は営業部・技術部がそれぞれ固まって座る島型レイアウトでしたが、座席の流動化により異部署の社員が日常的に言葉を交わすようになりました。
当社には「水」と「電気」という2つの事業部門があり、偶然隣り合わせた社員同士の雑談から「水と電気をセットで提案できるのでは」というアイデアが生まれ、実際に受注につながった事例も出ています。前期(4月決算)は過去最高益を記録しており、環境の変化が着実に業績へ反映されはじめています。
好環境が行動と結果の連鎖を生む
業務の効率化、コミュニケーションの活性化、そして有機的な売上の向上。この3つが重なり合う場所。それが現在の東京支店が体現しようとしているオフィスの姿です。
業績が向上すれば社員の手応えも増し、仕事への意欲がさらに高まっていく。移転以降、こうした好循環が着実に回り始めています。良い環境が良い行動を生み、良い行動が良い結果につながる。そのポジティブスパイラルは、今まさに拡大・持続しています。

1.エントランス
旧オフィスのエントランスは受付のみのシンプルなつくりでしたが、移転にあたり「来訪者がくつろげる場所をつくりたい」という社員の要望から、現在のソファーラウンジが生まれました。
正面にはデジタルサイネージを設置し、水や電気に加えて掘削・移動まで自社で完結している強みを紹介しています。来訪者が同社の事業や姿勢を自然に理解できる時間へと変えるエントランスになっています。
2.執務エリア
新オフィスでは執務エリアをフリーアドレス化し、部門ごとの固定席を設けず、営業部門・技術部門の壁を取り払っています。すべてのデスクに大型ディスプレイを備え付けることで、技術者がどの席でも業務を行える環境を整えました。
部門横断の座席配置により、自然なコミュニケーションが生まれ、情報共有のスピード向上にもつながっています。
3.ファミレスシート・眺望デスク・リフレッシュスペース
執務エリア内には、短時間の打ち合わせに使えるファミレスシートや、外の景色を眺めながら作業できるカウンターデスクを設けています。さらに、食事や休憩に利用できるリフレッシュスペースも整備し、気分転換しやすい環境を実現しました。働き方に応じて場所を選べる、多様性のあるワークスペースとなっており、気分や業務内容に合わせて最適な環境を選択できるようになっています。
4.会議室・集中ブース
移転後は支店間の打ち合わせを Web 会議に切り替え、会議室には最大36人が画面共有できる大型モニターを導入しました。加えて、個々の業務で利用できる Web ミーティング用の集中ブースを2室設置しています。オンライン化により、準備の効率化や意思決定の迅速化が進み、移動にかかっていたコストと時間も大幅に削減されています。
5.ゴミ削減の相乗効果
同社は環境省の「エコアクション21」に参加しており、ゴミ削減を重要な取り組みとしています。旧オフィスでは1人1台のゴミ箱があったため、60リットル袋が毎日5〜6袋出ていましたが、現在は30リットル袋が1袋にも満たない量にまで減少しました。さらに、キャビネットを38ラックから6ラックへ削減したことで通路が広がり、オフィスの美化とスペースの有効活用にもつながっています。