若手のための“自己キャリア”

#16  PDCAサイクル再考

PDCAは、時代遅れのメソッドなのか?

ひと頃、ビジネス関連の研修や勉強会に参加すると「PDCAサイクル」の実施が推奨される時期がありました。「PDCA」とは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4つの言葉の頭文字から成る造語で、1950年代にアメリカの経営手法として日本に紹介されました。
その後は、生産・製造、品質管理などの現場で実践され、トヨタ自動車に代表される"終わりなき改善"が定着。「品質世界一」を誇る日本製品のボトムを支えるフレームワークとして、また、あらゆるビジネス領域で質の高い仕事をするためのマネジメントサイクルとして大いに重宝されていました。ところが2000年あたりを境としてPDCAサイクルは鳴りを潜め、現在は「時代遅れのビジネスメソッド」などと言われています。

かつての日本は"モノづくり大国"として、製造業を中心に経済発展を遂げました。ところが2000年以降は、今日に至るまで成長のスピードが鈍化しています。その原因は「70年も前から使われてきたマネジメントサイクルにしがみつき、使い続けてきたから」と指摘するアナリストが少なくありません。
PDCAサイクルを導入するためには、明確な目標と、それを実現させるための計画を立て、評価や改善にも十分な時間を割く必要があります。しかし、デジタル化が進む現在のビジネス環境は猛スピードで変化していて、モノやサービスのライフサイクルも短く、常にアップグレードが求められます。つまり、環境変化のスピードに合った事業展開をおこなうためには、PDCAサイクルは「手間がかかり過ぎる」というわけです。またPDCAサイクルは、実行した計画を評価して改善するため、どうしても過去の成功体験になびきやすく、斬新なアイデアやチャレンジが評価されにくい傾向がありました。したがって、新しい視点を取り入れることに重点を置く今のビジネス環境では"不適合"とみなされてしまったわけです。

この10年ばかり、PDCAサイクルに代わるマネジメントサイクルとして注目されているのが「PDRサイクル」です。これはPrep(準備)、Do(実行)、Review(再検討)のサイクルを繰り返す手法で、同じ「P」でもPDCAサイクルがPlan(計画)であるのに対して、PDRサイクルはPrep(準備)であるところが2つのサイクルの相違点です。つまり、いちいち計画を練るのではなく、「これをやろう!」と考えたら、準備して即実行というのがPDRサイクルのポイントです。このスピード感が変化の激しい現代にはマッチしていて、より早く仮説検証を進められると言われています
ただ勘違いしてならないのは、PDRサイクルも1回で目標をクリアできるわけではありません。PDCAサイクル同様、目標に対して有効な手立てが見つかるまでは、トライ&エラーを繰り返すことが必要です。

POINT

結論から言うなら、フレームワークやマネジメントサイクルを有効に活用するためには、どのメソッドを選んでみても、目標達成までには「それなりに時間がかかる」と考えるべきです。確かに、取っつき易いPDRサイクルの方が、「比較的簡単に改善を重ねてゆける」という点では、今のビジネス環境にフィットしているように思えます。しかしながら、会社の躍進や個人の昇進を左右するような「失敗できないビジネス」を立ち上げる場合は、無計画に動く人はいません。そこではやはりPDCAのロジックに則り時間をかけてサイクルを回すべきでしょう。かたや、「失敗できない」サバイバルな事業ではなく、「失敗を繰り返せるビジネス」においては、PDRのロジックで高速でサイクルを回す方が、発見が多いように思います。

ビジネスライター 吉村高廣の視点

PDCAサイクルは困難を伴う目標に対してこそ効果があります。身近なコトに例えれば「ダイエット」です。
 ①ダイエットのために毎日1時間のウォーキングを計画する。
 ②計画を実行する。
 ③定期的に体重計に乗り経過を観察する。
 ④体重が減らない理由を考え計画を改善する。
このサイクルを辛抱強く実行していれば必ず効果は表れます。また、PDCAサイクルを回してゆくことによって、プランニングのし方や、計画を成功に導くノウハウが蓄積されてゆきます。さらに、的確なチェックが出来るようになり、正しく原因分析がおこなえるようにもなります。最終的にサイクルを効率的に回せるようになれば、成果を出しやすくもなります。仕事でも同じことが言えます。一筋縄ではいかない案件に対してPDCAサイクルを回して改善を重ねることは、個人のキャリアアップを考えても、メリットの大きい取り組みだと思います。

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■記事公開日:2022/02/07
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=PIXTA

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