若手のための“自己キャリア”

#3 MEMO入門

いいメモは生産性を向上させる

知人が取締役を務める広告制作会社でのことです。新規広告案件の社内ミーティングに入社2年目の若手デザイナーを初めて同席させたところ、メモをとる気配がまったくありません。そこで担当ディレクターが「なぜキミはメモをとらないの?」と尋ねると「大丈夫です。録音していますから」と、悪びれる様子もなく机の上のスマートフォンを指差したそうです。
ミーティングのメモ代わりにスマートフォンで録音する。さすがにそれはいかがなものかと思いますが、役立つメモを効率的にとるのは簡単なことではありません。要点を得たメモを素早くとるには経験を積むことが必要です。そこで今回は、若手でも今日から実践できるメモフォーマットをご紹介します。

新しい商品やサービスを開発する。新規事業を立ち上げる。WEBサイトや広告を制作したり改修する。社の内外を問わず、具体的な目的があるビジネスミーティングのストーリー(内容)は、ほぼ決まった要素で構築されています。その要素を把握しておけば、メモはとりやすくなり、後々役立つ資料になります。

《ミーティングの構成要素事例/菓子メーカーの場合》

1.現状 新しい目的を論じる前の現状分析(売上が落ちている)
2.課題 分析から見えてくる成長阻害要因(主力商品の顧客離れ)
3.展開 目的の核となるアクションプラン(新商品の開発)
4.方針 プラン実現に向けた実行方針策定(トレンドを視野に入れたテイスト)
5.課題 実行するための不確定要素洗出し(コストバランスの検討)
6.展望 プラン実現で期待できるメリット(費用対効果に基づく収益展望)

以上の6つの中でも特に慎重にメモしたいのが、[現状に対する課題]と[方針に対する課題]の2つのセットです。現状が充実しているのであれば新しい目的は必要ありません。不十分だからこそ新しいプランが必要なのです。そしてそこには必ず[課題]があります。ここを明らかにしているメモは、後々仕事をする上で大いに役立つ資料になります。またそのメモは、そのまま企画書に落とし込むことも可能です。

社内のミーティングであれ、クライアントからのオリエンテーションであれ、会議に臨む時は、以上6つの項目を、予めノート1ページごとに項目立てしておくこと(見出しを立てる)をお勧めします。もちろん話がこの順番で進むとは限りませんが、その場合は、今話している内容がどこの項目に該当するかを自分で判断して、そのページに箇条書きで書き連ねてゆくと良いでしょう。
ただし、広告制作依頼のオリエンテーションのように、クライアントが成果物に対して具体的なイメージを持っていない場合は、4∼6については省略。最後の項目を[要望]に変え、漠然としたイメージだけでもヒアリングできれば、そのメモは合格点。その後の実務がブレなく進むことは間違いありません。

POINT

脳科学の観点からも、手を動かしてメモをとることは、情報の整理・整頓と想起のスイッチになることが明らかになっています。つまり、メモをとるという作業は単なる事象の記録ではなく、自分なりの検証と仮説をほぼ同時に導き出す訓練でもあるのです。しかし今は、パソコンの普及で文字を書く機会が圧倒的に減っています。そんな時代の風向きから手書きのメモは敬遠されがちですが、カルチュア・コンビニエンス・クラブ創業者の増田宗昭氏や、GMOインターネットの熊谷正寿氏など、大成功しているビジネスパーソンには"メモ魔"が多いのも事実です。皆さんも今回のフォーマットを参考にしてメモをとることに慣れ、独自の"MEMOスタイル"を確立してください。

ビジネスライター 吉村高廣の視点

最近はメモのとり方が2種類あります。1つは手書きのメモです。そしてもう1つが、パソコンに向かってパチパチ打つメモです。このパチパチメモがいけません。ある日の会議で、広告代理店の若手営業がそれをやってしまいました。会議が始まってクライアントが話し出すと、パチパチ...当然目はパソコンの画面に釘付けです。しばらくすると、日ごろ温和なクライアントが「ねえ、○○さん、話聞いてる?」と、不愉快きわまりなしといった顔つきで問いかけました。その時営業は、一瞬、何が悪くて指摘されたのか分からない様子でぽかんと...。まったくもって、やれやれなひとコマでした。メモをとるのはビジネスにおいて大事な習慣です。でもそれ以上に大切なのは、相手の顔を見て話を聞くという初歩的なマナーです。

オフィスを借りたい・移転したい インターネットで簡単検索 www.miki-shoji.co.jp
■記事公開日:2018/06/12
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=PIXTA 

過去の記事

リアル・ビジネス
英会話〈27〉
〈27〉
I don't know. Theme NGフレーズ 文法的には間違って 2023.09.26更新
オフィス探訪
〈16〉
外資系企業ならではのエッセンスが、至るところに ちりばめられたクローダジャパン株式会社のオフィス クローダジャパン株式会社は、グローバルに... 2023.09.25更新
シリーズ
清野裕司の談話室〈27〉
〈27〉
「経験の深掘り」がムーブメントを起こす鍵になる。 何を食べても、どこに行っても... 2023.09.25更新
駅チカビル
〈4〉
ビジネスを加速させる 新宿グランドターミナル構想 世界有数の大繁華街であり... 2023.09.25更新
ワークスタイル・ラボ
〈14〉
電子帳簿保存法の改正で小口精算が楽に!経費精算のキャッシュレス化 私たちの生活にすっかり定着したキャッシュレス... 2023.08.28更新
駅チカビル
〈3〉
新旧の様々な価値観を活かしながら 魅力的なビジネスエリアに変化する神田 東京の下町風情を随所に残す神田... 2023.08.28更新
Officeオブジェクション
〈19〉
フリーアドレスのメリットとデメリット フリーアドレスは1987年に清水建設技術研究所が... 2023.08.28更新
時事考論
〈2〉
億万長者は幻想か? 宝くじ売り場にも高齢化の波 今年も『サマージャンボ宝くじ』... 2023.07.26更新
駅チカビル
〈2〉
再開発が計画される駅西側SL広場一帯 進化するサラリーマンの聖地・新橋 東京を代表するビジネス街新橋は... 2023.07.24更新
ビジネスマンのメンタルヘルス
〈18〉
職場がゆる過ぎて不安を感じる若者たち ちょっとした言動が「それ、パワハラです!」と... 2023.07.24更新
オフィス探訪
〈15〉
リモートワークのメリットを享受した社員たちが、出社して良かった!と思える空間を。 商品価格相場の比較サイト『aucfan.com』の運営と... 2023.07.13更新
エリア特集
〈34〉
国内外から人とビジネスを呼び込み"超成長"を目指す福岡市 現在福岡市では、市長が「100年に1度の 2023.06.27更新

バックナンバー※2023.06.20 現在

文字サイズ