これまでのオフィス構築は、総務部の担当者などが主導して、社員の要望を聞き、必要なスペースを考え、さまざまな条件を整理しながらレイアウト案を検討する。その案を社員に見てもらい、意見を聞いて修正を繰り返しながら、少しずつ理想のオフィスに近づけていくのが一般的でした。しかし、このプロセスがAIによって大きく変わる可能性があります。
たとえば、新しいオフィスに移転する際に、社員から、集中できるスペースがほしい、部署を越えて交流できる場所がほしい、会議室を増やしてほしいといった要望を集めたとします。これまでは、担当者がこうした要望の一つひとつに耳を傾けて、面積や動線、コストなどとの兼ね合いを考えながらレイアウト案を検討していました。
AIを活用すれば、こうした複数の条件を一度に整理し、さまざまな組み合わせを検討できます。会議室を増やす代わりに固定席を減らしたらどうなるか、交流スペースを広げるとほかのスペースにどんな影響が出るかなど。予算を変えずに社員の要望をできるだけ反映するにはどうすればいいかを可視化できます。
ここでAIの大きな価値となるのが、「最適化を高速で繰り返せること」です。人がおこなえば膨大な時間のかかる作業を、AIなら短時間で何度も繰り返すことができる。社員から新たな意見が出れば、それを条件に加えて再び検討する。そして、より納得度の高い「オフィスの青写真」を描くことができるのです。
これまで時間やコストの制約から十分に検討できなかった案も、AIを使えば短時間で、より理想に近い形を探していくことが可能になります。
もちろん、AIに条件を入力すれば、すぐに「正解のオフィス」が完成するわけではありません。社員が何を大切にするのか、会社としてどんな働き方を目指すのかを決めるのは、あくまで人です。AIは、その思いや条件をもとに、人間だけでは時間的に難しかった選択肢を数多く提供し、最適解に近づくための試行錯誤を高速化します。
そして、この考え方は、オフィスを「一度つくって終わり」のものから変えていくことにもつながります。社員の出社状況やスペースの利用状況、会議の頻度などのデータをもとに、「いまの働き方に、このオフィスは合っているのか」を定期的に見直していく。必要であればレイアウトやスペースの使い方を変え、働き方の変化に合わせてオフィスを更新していくことも可能です。AIによって、時間やコストの制約が取り除かれれば、より多くの社員の要望を反映させた働きやすい環境を、柔軟にアップデートできるようになるのではないでしょうか。

■記事公開日:2026/10/27
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=PIXTA